資金洗浄にはビットコインでなく不動産が有効

原文:Money Launderers Use Property, not Bitcoin – BitMEX Blog

仮想通貨には一部で悪評が漂う。「マネーロンダリングを幇助する」という通念があるのだ。仮想通貨投資歴の長いHodler(暗号通貨保有者)たちは、公開台帳の存在や米ドルと比べた換金性の低さを理由に資金洗浄にまったく向かないと反論する。米ドルの方が向いているとすると、どの米ドル資産が資金洗浄に有利だろうか?プロは「ビットコインではない」と断言する。

昨今、コカイン売買で得た100万ドルの利益を新品の100ドル紙幣で洗浄するのは容易ではない。銀行に行って預金しようとしても、背を向けた窓口の職員によって、警察に通報されるのが関の山だ。ニューヨークの宝石街を訪れ、ダイアモンドを購入して資金を洗浄できたとしても、このダイアを買値で売りさばくのは至難の業だ。どの国の政府も国内フローの引き留めを常に望んでいる。

ただ、各国政府は時折、誠実な役割を演じることを余儀なくされ、テロリストへの資金供与撲滅を明言する(サウジアラビアは例外)。以下に、不動産市場が未洗浄の資金にとって有能な「ランドリー」になる理由を説明する。

まず、香港での不動産の購入と保有に関する開示に目を向ける。香港は中国人の資金洗浄の舞台であり、米国では世界中の資金が洗浄される。本稿では、共通報告基準(CRS)を通じて両方を考察する。平均的な中国人富裕家Zhou氏の視点で、現金の洗浄方法、中国政府から資金源を隠蔽する方法を考察する。

中国人は同国政府の貪欲な性質を熟知している。過去30年、経済改革は大方の国民に大いなる恩恵をもたらしたが、政治的な過ちを1つでも犯せば、財産を没収され、農村地域に追放される可能性がある。国家が完全に統制する金融システムでは、中国政府の意向次第で、瞬く間に身ぐるみ剥がされることも他人事とは言えない。

自由の国アメリカは、世界各地に居住する納税者のあらゆる金融資産の所在を知る必要があると判断し、米国人の資産に関する報告を金融機関に義務付けている。中国などの多数の外国でも、米国の姿勢に同調し、共通報告基準(CRS)創設の運びとなった。CRSでは、加盟国に他の加盟国と金融データを共有する道筋を設けている。つまり、中国は香港に中国人の情報を要求できるのである。

CRSの進展に伴い、非常に興味深い次の2つの動きが見られた。

  1. 米国はCRSの批准に失敗した。つまり、米国人は米国内に資産を保有する中国人の金融データを中国と共有する義務を負わない。実に考えさせられる話しである。米国はすべての国にFATCAに従い、米国人に関する情報の提供を求めているのに、他国の便宜は図ろうとしない。米国人以外が保有する資産は結果としてどこに行き着くのだろう。
  2. 香港は報告対象資産から不動産を除外した。

こちらのサウスチャイナモーニングポスト の記事が指摘するように、中国人は早速、銀行預金を不動産に転換する動きに出た。不動産は経済活動を有力な原動力の1つであり、不動産ブーム時には多数の雇用が創出された。政策的観点からは、不動産ストックの増大奨励策を講じることで、経済運営の手腕を誇示することができる。

同日は、中国が共通報告基準(CRS)と共同歩調を取る日付である。この基準は、G20の要請に応じて策定された外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)タイプの制度であり、国際的租税回避行為の撲滅と国際税制の完全性の保護を目的とする。中国政府は、2014年にCRSの参加を誓約した。CRSの参加により、中国本土の居住外国人が保有する金融資産情報も収集され始める。合意によると、情報は来年、香港を含む100の国・地域の税務当局と交換される。譲渡税が課されない香港は、多数の中国本土投資家にタックスヘイブンとみなされてきた。だが、外国に保有する金融資産を中国当局に申告するのを防ぐため、こうした投資家は7月の期限までに、金融投資を不動産に転換する必要性に迫られている。

米国に関しては、全米リアルター協会が、不相談の購入を顧客の身元確認(KYC)/マネーロンダリング防止(AML)規制の免除対象とするよう画策している。金融犯罪取締執行ネットワーク(FinCEN)は、一部のホットマネー市場で、不動産が明白な資金洗浄マシンとなっていることを突き止め、2017年8月に開示要件を課した。

2017年2月23日の満期を前に、FinCENは、最新GTOでの報告対象トランザクションの相当部分が、ダミー会社の購入者の受益所有者と判明した個人による犯罪が疑われる活動に関連していることを発見した。結果として、FinCENは直近GTOの満期を2017年8月22日まで180日延長し、今年中に別の都市でも恒久的データ収集の必要性を検討する可能性がある。GTOは、銀行ローンなどの外部資金を調達せずに居住用不動産を購入する法人の持ち分を25%以上所有する自然人を特定するために、次の地域においてトランザクションが所定の閾値を満たす場合、特定の権原会社を必要とする。

  • 50万ドル以上 – テキサス州ベア郡
  • 100万ドル以上 – フロリダ州マイアミ・デイド郡、ブロワード郡、パームビーチ郡
  • 150万ドル以上 – ニューヨーク市ブルックリン区、クイーンズ区、ブロンクス区、スタテンアイランド区
  • 200万ドル以上 – カリフォルニア州、サンディエゴ郡、ロサンゼルス郡、サンフランシスコ郡、サンマテオ郡、サンタクララ郡
  • 300万ドル以上 – Nニューヨーク市マンハッタン区

これにより、悪質な資金洗浄に対抗するために適切な方向へ大局的に一歩踏み出したことになるが、典型的な投資家であるZhou氏は数百万ドルを隠し持ち、今までどおりビジネスを続けている。

中国政府の詮索の目や、資本逃避の防止に取り組む他の政府の目を逃れるには、米国はなお選好される資金の隠し場所となっている。上記の上限額を超えない限り、無傷の銀行口座を開設し、現金で不動産を購入するのはさほど難しくないはずである。

ビットコインはどうか

香港や米国の流動的な不動産市場で数百万ドルを洗浄し、隠蔽するのは明らかに容易である。では、我らがビットコインを使用するとどうなるだろう。

100万ドルの資金をビットコインで移動させるとしよう。

選択肢は2とおりある。取引所にアカウントを開設するか、ディーラーと相対(OTC)取引をする。

これだけの額を扱える取引所は、銀行と密接な関係を築いている。銀行は広範なKYC / AML検査をすべての口座に求めている。目的が資金フローの隠匿であれば、これは最善策とは言えない。召喚状を提示され、取引所は顧客情報を提出せざるを得ない。

取引所を使用できないのであれば、OTCディーラーと取引できるかもしれない。だが、大手ディーラーもKYC / AML規制に従う必要があり、同じく銀行と強固な関係を築いている。

取引所と規制準拠のOTCディーラーは、主な流動性の提供者である。KYC審査なしで顧客を迎えるディーラーもあるが、スプレッドは市場と大きくかけ離れている。資金サイズに対応可能であったとしても、資金洗浄のために、20%超の利息が予想される。

仮想通貨市場での資金洗浄は、身元情報を提供したくないのであれば、きわめて難しい。不動産の方がはるかに容易である。不動産ブローカーには政府から金利が付与される。ブローカーはKYC / AMLの報告要件を緩和するためにあらゆる努力を注ぐだろう。

結論:「違法資金の洗浄を可能にするのは、Satoshiでなく アンクル・サム(米国)である。」

ゴドーを待ちながら

原文: Waiting for Godot – BitMEX Blog

“Nothing happens.Nobody comes, nobody goes.It’s awful.(何も起こらない。誰も来ない。誰も出て行かない。最悪だ。)” 

― サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』

仮想通貨市場は、その発端以来、さまざまなゴドーを待ち続けている。トレーダーにとってのゴドーとは、架空の機関投資家である。彼らが市場で大勝負をかけると、参加者は一生楽に暮らせるだけの大儲けをして、その一部でランボルギーニを購入する。彼らが市場に関与すれば、流動性は驚異的に改善し、市場は筋書き通りに「振る舞う」ようになる。

自分も含め仮想通貨批評家の多くは、2018年を機関投資家が大勝負に出る年と宣言した。新規マネーが殺到し、ビットコイン価格は1万ドルを突破。瞬く間に参加者を天界(ヴァルハラ)へ導いた。

北半球で夏が近づく中、機関投資家はこの新市場に実際に群がるだろうか。ゴールドマンとJPモルガンの仮想通貨取引デスクのニュース以外で、仮想通貨市場への機関投資家の興味を表象するのはどういった要因であろう。

最も有力なのが、CMEとCBOEビットコイン先物契約の取引高である。いずれの契約も米ドル建て証拠金で決済される。この契約を取引すれば、ビットコインにまったく手を触れずに、ビットコイン価格のポジションを取ることになる。BitMEXの契約の証拠金と決済はビットコイン建てである。つまり、取引するには、ビットコインを所有していなければならない。大半の機関投資家はビットコインという概念を好むが、実際に購入、保管、移転することに及び腰だ。

数値データ

上のグラフでは、CME、CBOE、BitMEXでのビットコイン/米ドル契約の年初来取引高(米ドル建て)を示している。

最初のポイントは、BitMEXの市場シェアの大きさだ。BitMEXのリテール顧客基盤は、CMEとCBOEの機関投資家顧客基盤の数倍規模に及ぶ。BitMEXの大半のリテールトレーダーは、 CMEやCBOEへのアクセスを提供するブローカー付きのアカウントを開設するのが非常に困難である。最小の必須入金額が相対的に高いためだ。CMEとCBOEでは、レバレッジ率は低目で、想定元本は高目である。したがって、BitMEXの典型的顧客がアクセスを得たとしても、契約1枚でさえ取引できないだろう。

このグラフのデータからは、リテールトレーダーの資金フローが市場でなお圧倒的シェアを占めることが明確に読み取れる。ちなみに、Telegram、WeChat、Redditなどに常駐していれば、デリバティブ市場を中心とする急転が引き金となるスポット相場の動きについてユーザーが話しているのを聞くことになるだろう。OKExの金曜の決済が市場を完全な乱高下状態に陥らせたことは何度もある。BitMEX XBTUSDスワップでは大量の資金調達率の大量支払いが近づいており、これも取引行動を左右する。  一方で、CMEやCBOEの満期を受けた市場変動はほとんど耳にしない。

転換期

CMEとCBOEの取引高からは、機関投資家の消極的な関与がうかがえる。1~5月の前月比CAGR(年平均成長率)は3.94%にとどまる。ただし、この状況は変化が予想される。今後6~12か月にわたりが取引を活発化していく中、銀行は顧客が仮想通貨の洗礼を受ける手助けをし始めるだろう。銀行が取引デスクの開設を公表することでリスクを公に取り始めれば、銀行はあらゆる事業を生み出して、そのリスクを正当化するはずだ。最も取引が簡単な商品は、原資産を実際に保有する必要のない商品である。

新設の取引デスクが手っ取り早く成功を納めるには、CMEとCBOE上場先物でリスク商品の価格を提供することだ。顧客は仮想通貨を取引したくてうずうずしている。セルサイドのデスクは、2方向でクォートし、取引日内に取引所リスクを解消することになる。顧客は潤沢な流動性にすぐアクセスでき、銀行はそれなりの額の取引から、十分な売買スプレッドを稼ぐことができる。

取引高と建玉が増えるにつれ、米ドル決済とビットコイン決済の各デリバティブ市場の相互作用は、市場の収益構造の変化につながっていく。そうなる前に、興味のあるトレーダーに、the BitMEX vs. CME Futures Guideの一読をおすすめする。BitMEX商品の非線形的要素は事態を複雑にするものの、いずれ、収益につながる裁定取引やスプレッド取引が2つの市場を舞台に行われることだろう。

ビットコイン経済学 – 負債デフレによるスパイラル(パート3)

レポートの原文は以下より。

Bitcoin Economics – Deflationary Debt Spiral (Part 3) – BitMEX Blog

抜粋

本レポートは、ビットコイン経済学3回シリーズの3回目である。このシリーズの第1回では、銀行の貸付の仕組みについてのありがちな誤解、および銀行が経済における信用水準を拡大する能力にこの貸付の仕組みがどう影響しているかについて考察した。こうした一般に理解されていない貨幣の本質を分析し、それがビジネスサイクルに及ぼしうる影響を評価した。このシリーズの第2回では、ビットコインが独特な特徴を併せ持つと考えられる理由を、伝統的な貨幣と比較しながら検討するとともに、  こうした特徴が銀行の信用拡大能力に及ぼしうる影響について説明した。第3回(パート3)では、ビットコインのデフレ的性質を説明し、こうしたデフレを必然とするビットコインの弱点をいくつか検討する。また、デフレの経済的デメリットに対する一部の従来の概念について、ビットコインは一部の批判派が考える以上に弾力的である可能性についても考察する。

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ビットコインのデフレ問題

ビットコインと関連仮想通貨システムについて、供給上限(ビットコインの場合は2,100万)と付随するシステムのデフレ的性質を批判する声がよく上がっており、経済への悪影響が懸念されている。批判派は、マネーサプライに限りがある経済政策は、歴史的に良策と言えず、経済破綻または悪化につながると主張する。なぜなら、貨幣価値の上昇傾向を受け消費者が支出を控えるため、あるいは債務の実質価値が増加し、経済に占める債務額が増大するためである。ビットコイン支持派は、過去のこうした教訓を学んでいないことを理由に「経済に疎い」と頻繁に揶揄される。

ビットコイン経済学シリーズのこのパート3では、ビットコインは過去に登場した貨幣種類と根本的に異なることから、こうした批判派が考える以上に状況は複雑である可能性について指摘したい。こうした独自の特徴により、ビットコインはデフレ的方針により適する可能性がある。逆に、ビットコインには制限や弱点もあり得る。つまり、インフレ率が上昇すると伝統的貨幣形態には当てはまらない悪影響が及ぶ恐れがある。ビットコイン経済の批判派の一部はこうした問題点を見過ごすことが多いと我々は考える。

ビットコインのインフレ問題に関する主な引用

中央銀行紙幣の供給は、容易に増減できる。紙幣に対する需要ショックがプラス(消費/投資から貨幣にシフト、すなわち「デフレショック」)の場合、中央銀行は証券と外貨を購入してマネーサプライを増大させる。    紙幣に対する需要ショックがマイナスの場合、中央銀行は証券などの資産売却によって貨幣を吸い上げる。  [ビットコイン]の場合、2番目の選択肢はそのプロトコルに含まれていない。つまり、仮想通貨プロトコルには通常、通貨の供給ルールは含まれる、通貨の吸収や償却は含まれていない。我々は、この不可逆性を軽減できるだろうか?

– 岩村充教授(『Can We Stabilize the Price of a Cryptocurrency?: Understanding the Design of Bitcoin and Its Potential to Compete with Central Bank Money』) – 2014年

肝心な点は、ビットコインの世界的供給にインフレ率(例えば年率2%)を織り込まなければ、通貨としての機能が著しく損なわれることにある。人々は、今年より来年価値が高くなることを知っているため、ビットコインを買いだめし始める。

–  David Webb (動画の51分目) – 2014年

大局的には、ハードサプライの上限、すなわち内在的デフレは、貨幣候補にとって本質的強みとは言えない。貨幣の強みは、社会的ニーズを満たせる点にある。ビットコインは内在するデフレ的性質により、社会的ニーズを満たすという側面で期待外れに終わると筆者は考えている。もちろん、私の考えが誤りと判明する可能性もある。状況を見守ることにしよう。

–  エコノミスト誌 (『Bitcoin’s Deflation Problem』) – 2014年

ビットコインの「マネーサプライ」は、最終的に2,100万単位で頭打ちとなる。この制限は、ビットコインが自由主義という原則を貫くうえで、インフレ気味の政策運営という中央銀行の介入を避ける賢明な方法であり、大半の通貨はこうした介入に左右される。ただ、最近の中央銀行には、低水準であれインフレ率をプラスに保つことを支持するしかるべき理由がある。現実世界の賃金は「硬直的」で、企業が従業員給与を削減するのは困難である。賃上げ率がインフレ率を下回る場合、わずかなインフレは実質的に労働者賃金を削減させることで、システムの潤滑油となる。マネーサプライの成長ペースが鈍すぎる場合、物価は下落し、賃金が硬直的な労務コストは上昇する。その結果、失業率は上昇する傾向にある。さらなる物価の下落を見越す労働者が現金を貯め込む場合、景気後退に拍車がかかる。

エコノミスト誌 (『Money from Nothing』) – 2014年

現在のグローバルシステムもかなりひどい状態であるが、ビットコインは最悪だと私は考える。  初心者にとって、ビットコインは元々デフレ的である。作成可能なビットコインの数には上限がある(ちなみに作成とは、業界用語で「採掘」と呼ばれる。新しいビットコインは数学的演算を行うことで作成されるが、ビットコイン業界が発展するにつれ、急速に難解になっている。空前の桁数の素数を計算するように、異次元レベルへと向かっている)。そのため、新しいビットコインの作成コストはどんどん上昇し、ビットコイン価格の上昇率は市場で入手可能な財やサービス価格の上昇率を上回る。資金の投資妙味があるモノが少なくなり、消費者が支出する資金も減少する(モノの供給ペースが貨幣の供給ペースを上回る)。

–  Charlie Stross (『Why I want Bitcoin to die in a fire』) – 2013年

いずれにしても、2,100万問題は払拭されない。この上限に達すれば、ビットコインの供給はいずれ、わずかな準備銀行活動に向かわざるを得なくなる。供給不足の克服策は、既存コインの再貸付、あるいはいずれビットコイン建てで決済が可能という根拠を拠り所とする貸付(伝統的な銀行活動)のみとなるためだ。

Izabella Kaminska – フィナンシャル・タイムズ (『The problem with Bitcoin』)– 2013年

この実験[ビットコイン]から通貨体制について学べることは、それが新たな絶対的基準のようなものとは逆の傾向を強めるということである。それが示すのは、こうした基準が消費控え、デフレ、不況にいかに脆弱であるかということのみにとどまるためである。

–  Paul Krugman (“Golden Cyberfetters』 – 2011年

ビットコインは、限定的規模であれ自立に成功しているが、需要変動に対応する仕組みに欠けている。ビットコインの需要が増大すれば、ビットコイン建てでの価格下落(デフレ)につながり、需要が減少すれば、価格上昇(インフレ)につながる。これら各ケースで何が起こるのか?現在、ビットコインの需要は増大しているため、デフレのケースについて先に述べよう。今日より明日の方があるモノの価値が高くなると考えられる場合、消費者はどのように行動するだろう。そう、そのモノを手に入れ、ため込んでしまう!価値が上昇する一方のモノをどうして手放す必要があるだろう。つまり、需要が増大し続けると、さらに増大することになる。根拠なき熱狂(irrational exuberance)である。デフレは際限なく(少なくとも被害をもたらすまでの間)、デフレを誘う。

The Underground Economist (『Why Bitcoin can’t be a currency』) – 2010年

デフレと負債デフレによるスパイラル

多くの経済学者が、長年、インフレのメリットとデメリットを巡り論争を繰り広げている。ただ、論争の焦点はある理論に集約される(各学派に属する経済学者のこの件に対する見解は多岐にわたる)。  すなわち、デフレが望ましくない経済現象であるのに対し、年率2%前後の緩やかなインフレは望ましいというのが現在の経済的コンセンサスであると断言して良かろう。特定のプラス目標に向けてインフレを中央で管理することに反対するオーストリア学派は、ビットコイン、および金の若干デフレ的性質をひいき目に支持する傾向がある。

デフレに対する否定的な見解の主因として、1929年の大恐慌と負債デフレによる負のスパイラルが挙げられる。この理論は、景気後退にデフレが重なると、債務の実質的価値は増加するというものである。増加により、既に悪い景気はさらに悪化していく。経済学者のアーヴィング・フィッシャーは、1837年、1873年、1929年の大恐慌における金融危機の処方箋としてこの理論を形成した功績を認められることが多い。

そこで我々は、9つのリンクで、以下の一連の結果を推測できる。

1 債務の清算により、経済的困窮状態が定着し、

2 銀行ローンが返済されるにつれ、預金通貨の収縮、流通速度の減速につながる。こうした預金収縮と流通速度の低下は、悲観売りにより加速し、

3 物価水準の下落、つまりドルの膨張をもたらす。上述したとおり、こうした物価下落がレフレーションなどの干渉を受けないと仮定した場合、

4 企業の純資産はなお大幅に下落し、倒産を加速させ、

5 利益低下をもたらす可能性が高い。これは、「資本主義」、つまり営利社会では、赤字運営に対する懸念を生み、

6 生産、取引、雇用の減少につながる。損失、倒産、失業は、

7 人々の先行きと信用に対する不安感をあおり、ひいては、

8 消費行動が控えられ、景気後退に拍車がかかる。上記8つの変化は、

9 金利低下(特に名目金利の低下)、貨幣やレートの低下と商品価格や実質金利の上昇といった複雑な攪乱要因によって引き起こされる。

負債とデフレは、きわめて単純な論理的方法で大方の現象を説明する決め手となる。

アーヴィング・フィッシャー (1933年)

デフレとは批判派の主張ほど悪役であるか?

批判派がビットコイン支持派を「経済に疎い」と非難しても、批判派が常に正しいとは限らないし、ある微妙な点を見落としている可能性もある。まず、オーストリア学派でなくとも、デフレ(供給上限)が常に望ましくない現象であるかどうかは疑問である。デフレが望ましくない状況は確かにあるが、その判断は、経済の性質や社会で用いられる貨幣タイプに応じて異なり得る。人文科学はコンピューターサイエンスの数学と異なり、正答と強く確信できる者はいないし、学術界の意見は時と共に変化する。経済状況も同様であり、それが一連のダイナミクスの変化をもたらし、最適なインフレ政策が変わる可能性がある。したがって、「デフレは常に悪である」という強固な常に固定化したルールは、正しい理念でない可能性がある。例えば、インフレに対するフィッシャーの見解は、20世紀経済には正しかったが、テクノロジーは劇的な変化を遂げるであろう2150年までには、別のインフレ政策が社会にとってより適切となる可能性がある。

ビットコインは異なる性質を持ち、負債デフレによるスパイラル議論は的外れである

本シリーズのパート1とパート2で説明したとおり、ビットコインは米ドルや金本位制など経済で伝統的に使用されている貨幣と根本的に異なる特質を持つ。米ドルをはじめとする伝統的貨幣は、法定通貨の本質的特質である債務を基盤とする。片や、ビットコインは、信用拡大能力に弾力的な特質を持つ可能性があるため、本質的に債務とリンクしない。そのため、ビットコインを基盤とする経済では、経済破綻やデフレ時における債務の実質価値増大の影響は、想定されるほど大きくない可能性がある。したがって、負債デフレによるスパイラル議論は、ビットコインを基盤とする経済にとって関連性が薄くなるものと考えられる。  ビットコイン批判派の多くは、ビットコインのデフレ的貨幣政策のデメリットを評価する際、この点を見過ごしているのではないかというのが我々の見解である。

ビットコイン固有のインフレデメリット

デフレのデメリットに対する弾力性を高めるビットコインの潜在的メリットに加え、ビットコイン批判派は、ビットコインの以下のような弱点も見過ごしている可能性がある。こうした弱点によりビットコインはインフレにより脆弱となる。

  • 恣意的な環境破壊 – ビットコインに対するよくある別の批判として、エネルギー集約的採掘プロセスにより生じる環境破壊が挙げられる。本シリーズのパート2で採掘インセンティブについて取り上げたが、この問題は過大視されている可能性がある。採掘者には採掘活動の地理的場所に関して、それぞれ独自の幅広い選択権が与えられている。こうした柔軟性により、採掘者は新規プロジェクトに投資する代わりに、失敗したエネルギープロジェクトを活用できる。  ただし、ビットコインが環境にもたらす悪影響は、相当否定的な外部要因であると考えられる点は否めない。  採掘インセンティブは、トランザクション手数料とブロック報酬(インフレーション)から成る。したがって、インフレ率の上昇により環境被害の度合いは拡大し、否定的外部要因も増える。2%のインフレ政策が決断される場合、システム価値の少なくとも2%は、毎年環境の”破壊に費やされる可能性がある。こうしたインフレ政策の決断は、多少、恣意的であり、インフレターゲットが高いほど、環境破壊の度合いも大きくなる。既存の金融システムに平行する場合さえある。インフレ目標を達成するための中央銀行の景気刺激策も、少なくとも一部の批評家の目からは、高度の環境破壊を恣意的にもたらす可能性があると言われている。ビットコインを基盤とするシステムにおけるインフレと環境破壊との関係はより直接的で測定可能であり、  インフレが継続する代わりに、ビットコインでは、採掘インセンティブが完全にトランザクション手数料によって運営されるまで、ブロック報酬は4年ごとに半減する。つまり、環境破壊の度合いは市場によって左右することになり、市場は、インフレ的な金融政策の結果である恣意的な高度の環境破壊でなく、利用者がセキュリティに支払う意思のある金額を表す可能性がある。
  • 採掘者と利用者の利益のすり合わせ – 現在、採掘者の主な誘因は、トランザクション手数料でなくブロック報酬である。この点は、採掘者と利用者の利益相反など、エコシステムに潜在的な問題を多数もたらしている。例えば、採掘者は利用者の利益に反し、ブロックからトランザクションを除外することができる。採掘者の主な誘因がトランザクション手数料である場合の方が、採掘者がこの種の行動を取る可能性は小さいが、ビットコインのデフレ的方針を踏まえるといずれそれが現実となるのは確実である。
  • コイン価値の創出不能 – 投資家にとって、供給上限はビットコインの主なセールスポイントと考えられ、投資家の興味を掻き立て、システムの自立に不可欠な要素であったのかもしれない。無期限のインフレ方針が選択されたならば、経済的観点からはデフレ方針の方が不利であるとしても、ビットコインはこれほど成功できなかったかもしれない。

この議論の皮肉な点は「経済的批判が意味を持つのは、ビットコインが大成功を収めた場合のみ」という点

この議論の大半は、ビットコインの経済的意味に焦点を当てており、ビットコインが広範に普及しているため、インフレダイナミクスが社会に影響するものと仮定している。我々はこれをありそうもない結末と考えている。おそらく、ビットコイン批判派は、より強くそう考えているはずだ。さらに我々は、ビットコインが有益なニッチを満たし得ると考えており、検閲に強く、デジタル決済であるという性質を兼ね備えるが、経済における主要通貨となる可能性は小さい。したがって、ビットコインのデフレ的性質を巡る論争は、いずれにしても、概ね的外れであると考えられる。以上より、一部の批判派がこの点をビットコインに対する批判の根拠とするのは、やや奇妙な話しである。

この点は、2013年に米経済学者のポール・クルーグマン氏が『Bitcoin is Evil』という論文で展開した主張と類似する。クルーグマン氏は、「2005年前後までに、インターネットの経済的影響はファックスの経済的影響と大差ないことが明らかになるだろう」という1998年の発言を筆頭に、ビットコイン業界では広く嘲笑の的となっているが、以下の引用で引き合いに出した違いは、正確であると同時に示唆に富むものであると考えられる。

ビットコインがバブルであるか、素晴らしい発明であるかの両方について話そう。その理由の1つは、我々がこの2つの質問を混同しないようにするためだ。

ポール・クルーグマン – 『Bitcoin is Evil』 – 2013年

ビットコインの発明者ナカモト・サトシ氏は、社会的観点からメリットがあるのは、緩やかなインフレの方であったとしても、供給に上限を設けデフレ気味にすることが、システムの成功に役立つと考えたのだろう。システム考案者の立場からは、優先されるのは機能する決済システムの構築である。理論上、社会に有益であったとしても、成功しないシステムは最終的には用をなさないためである。

結論

結論として、ビットコイン支持派は経済に疎いというより、債務、デフレ、貨幣の特質、信用拡大について批判派の考えとは微妙に異なる理解をしているのだろう。対照的に、経済的主流派は貨幣と債務の関係をよく理解しておらず、ビットコインはこの2つの要素を何らかの形で分断する能力を秘めているという主張もあり得る。実際、この主張は、最もよく見受けられる誤解である。債務を貨幣から分断できる能力で、負債デフレによるスパイラルの問題を起こさずにデフレ環境をもたらすというビットコインの能力を多くの者は欠陥でなく利点と捉えている。

ただし、ビットコインがこの経済的問題を解決したとしても、恐らく、ビットコインがより成功を納める経済システムにつながると考えるのは短絡的であろう。ビットコインは新しい独自のシステムであるため、予想外または新規の経済的問題をもっと引き起こす可能性が高い。結局、完璧な貨幣など存在しない。伝統的な過去の経済問題をこの新種の貨幣に当てはめることが単純に適切でないのかもしれない。ビットコインの潜在的経済問題を見極めることは、より困難な可能性があるが、そのさらなる分析と基礎となる技術の理解を深めることが必要であると考えられる。

皮肉にも、デフレに関連するこうした経済的問題が的外れなものでない可能性は低いと考えるならば、ビットコインが広範に普及し、大成功を収める余地は小さくないということになる。その場合、賢明なのは、ビットコインを購入し、その後売らずに保持する(「HODL」)ことであろう。

EOS先物契約開始のお知らせ

この一ヶ月の間に、BitMEXでは取引エンジンの性能を大幅に改善し、システム全体の処理能力や過負荷時のレスポンス性能の引き上げを行いました。近日中に、BitMEXの発展とシステムのスケーリング手法をについて、私達が行った改善の詳細と、現在我々が取り組んでいる課題についてお伝えしたいと思います。前回のレポートはこちらでご覧いただけます。

BitMEX取引エンジンの性能向上と大きな需要を受けまして、私達はEOS Token / Bitcoin 29 June 2018の先物取引の提供を開始致しました。

アップサイド&ダウンサイド利益契約の行使価格の変更

6月8日(金)日本時間 21:00をもちまして、110%の行使価格であるアップサイド利益契約 XBT7D_U110、および90%の行使価格のダウンサイド利益契約 XBT7D_D90 は上場廃止がなされます。そして次の新契約が上場します:105%の行使価格であるアップサイド利益契約 XBT7D_U105、および95%の行使価格のダウンサイド利益契約 XBT7D_D95

2018年5月17日のサービス一時停止について

2018年5月17日、本日BitMEXの取引エンジンにおいて、これまでに前例がなく、また予測できないいくつかの問題が発生し、一日を通して注文の遅れとサービスの停止を生じさせました。

同日世界標準時10:00頃、メインの取引エンジンハードウェアに取り付けられているディスクのパフォーマンスが、急激に低下しました。これによりフィードへのアーカイブや、再掲載に遅れが生じ、これが重大な後方圧力となりました。ディスクの入力/出力オペレーションは、期待値の1/20ほどになりました。

BitMEXは予備のドライブも運用していますが、今回のケースでは、両方においてパフォーマンスの低下が同時に生じました。我々はこれらを交換するためにメンテナンスによるサービス停止時間を持つことを余儀なくされました。残念なことに、後方圧力は我々の予想を数段上回る速さで積み上がったため、我々は予定を早めました。

この問題によりデータの信頼性が失われたということはありません、しかし、マシンを通常のパフォーマンスに戻すために、予想よりも長い時間が費やされました。

これが完了した後、我々は取引を再開しました。残念なことに、別の問題がデータ保存の最中に発生しました。再インデックスと希少リクエストパターン領域において、特定のデータで予期しないインデックスの再生成とシンボルの再有効化が発生したためです。これが新たな後方圧力につながり、再度同様の症状を発生させました。

我々は上記の問題に対し、複数の原因を突き止め改善しました。現在取引エンジンチームは一日中、注意深くエンジンのパフォーマンスを観察しており、同時にこの減速の根本原因を調査しています。

BitMEX テクノロジーの規模拡張:パート 1

こんにちは。BitMEX の CTO(最高技術責任者)Samuel Reed です。

BitMEX の構築に当たった過去 4 年間は驚きの連続でした。創業当時、私たちの 1 人として、このプラットフォームがこれほどの成功を収め、2018 年ビットコイン/USD 取引を支配するにようになると想像できませんでした。

2014 年から今日まで、BitMEX のプラットフォームはゼロから 1 日あたり平均取引高が 30 億ドルになるまでに成長しました。当社の主力商品、XBTUSDの取引高は、世界の仮想通貨商品の中で頂点にあります。当社は、世界中で、5 言語で世界中のお客様にサービスを提供し、ビットコイン価格の取得と流動性に関して上級プラットフォームとなっています。

BitMEX チームは、堅牢なモバイル商品を構築し、正真正銘クラス最高の技術チームを結成するなど、能力向上に全力で取り組んできました。私たちは、成功する目的となった要因のために、成功を喜びつつ、こうした栄光にあぐらをかくことはありません。むしろ、まったく逆で、今まで以上に忙しくしています。

当社は、コミュニティに、当社がどのように創設され、前進しているのかを知って欲しいと考えています。言い得て妙の名言どおり、「バグを克服するにはそのバグを理解しなければなりません」1

まずは、実話から始めます。

出典:russellfreeman.com

2014 年、私は、コーディングの集中セミナーを主催するGeneral Assembly社の香港でのウェブ開発パネルで講演していました。同社は、卒業間近の学生に、プロとして働く経験を味合わせたいと考えていました。私はその機会を利用して、自分の過去について話しました。小規模企業、新興企業、公的機関数社でいくつかのポジションを経験し、ソフトウェアエンジニアの需要の高さに驚いたことを強調しました。

かなり陽気な性格の人物が背後から質問しました。「CTO を募集中の現金に乏しい新興企業はどうやって自社をアピールしたらよいでしょう。このように競争的な状況で優秀な人材を引きつける方法にはどうしたらよいですか?」

「良い質問ですが、答えるのは難しいですね。資金調達無しでは、リスクと安定を天秤にかける重大な課題に向き合うことになります。経験豊富な開発者が、大手ハイテク企業での 20 万ドル以上の給与、快適でリソースに恵まれた環境を、週 80 時間以上の労働のために棒に振らなければならない理由などありません。基本的にあなたが探さねばならないのは、能なし(本当にそう言いました)です。ただし、多数のより有利な選択肢にかかわらず、リスクをとる覚悟のあるほどあなたのアイデアを信じている能なしをね。」私は質問者に幸運を祈り、公開討論会を続けました。

討論会の後、その質問者がやって来て、ビットコインデリバティブの取引所をやりたいのだと言いました。そのとき悟ったのです。私が能なしなのだと。そして、Arthur Hayes と私はビジネスパートナーとなりました。

多額の資金を調達することなく、私たちはアルファオンラインを 6 か月以内に持ち込み、「BitMEX 取引チャレンジ」をスタートしました。これはルール無しの取引コンテストで、取引所の性能を試します。正真正銘、ルール無し(複数口座を除き)でサイトをハックすると賞金を獲得します。その当時は賞金としてビットコイン数枚を支払いましたが、大きな失敗はありませんでした。

私の人生にとって残念なことに、私たちが BitMEX を立ち上げたのは、私と妻が新婚旅行でクロアチアに滞在している 2014 年 11 月 24 日のことでした。香港に居た Ben と Arthur とは遠くから祝いました。この 2 枚の写真の当初の取引インターフェイスに注目してください。今でも、その当時のままの Trollbox メッセージを読むことができます。

2014年11月24日、クロアチアのドブロヴニク

2014年11月24日、香港

すべてのプロジェクトは、構築された時代の創造物です。2014 年初期、仮想通貨のエコシステムは、マウントゴックスが残した空洞により混乱していました。その当時、注目されていたのは、現在の「プルーフ・オブ・ワーク」対「プルーフ・オブ・ステーク」でなく、「プルーフ・オブ・リザーブ」という現在では忘れ去られた用語(Google 検索して、すべての人気投稿のタイムスタンプを見てください)。実際、これに関する質問は、我々の Reddit 立ち上げ発表に関するランキング 1 位のコメントでした。

ビットコイン取引所を運営する最初のルールは、これまでもずっとそうだったように、「ビットコインを失うな」です。

このルールは、BitMEX での私たちの行動のすべてに行き渡っており、当社ポリシーとして浸透し、今でもマルチシグを使用するすべてのトランザクションで 100% コールドウォレットを使用しています。ブロックチェーンでの 3BMEX トランザクションを見れば、そのことを確認できます。1,250 日連続(!)で、私たち 3 人のうち少なくとも 2 人は起きたら、その日の出金を確認し、当社のリスクチェックをしたら署名して、署名する次のパートナーに引き継いで、最終的にブロードキャストしました。

当時私は、ユーザーがこのやり方に反発すると思っていました。もちろん、ビットコインはそれ以前に誕生したあらゆる金融システムより多くの点で優れています。ただ、劣っている点もあります。保管管理は、未解決の問題であり、常に警戒が必要です。当社のお客様はこのことを知り、その重要さを認識していると思います。初期の時代に、私たちは出金時間について多くの苦情を受けました。取引高で世界最大の取引所となった現在、苦情を受けることはほぼ皆無です。人々は悟ったのです – お客様の入金をこのように慎重に扱うのは、容易ではないと。当社がそうするのは、それが便利だからでなく、安全だからです。

2014 年当時の BitMEX

2014 年という年は、BitMEX の構築方法にも影響しました。私の過去の経験に基づき、ReactJSを採用したことで、BitMEX はこの方法で立ち上げられる最初の取引所となりました。この選択は、2018 年に突入するまで、多くの果実をもたらしています。

当社は、自前のマッチングと証拠金処理エンジンを、大規模の時系列データのクエリに従来利用されていた技術、kdb+/qに構築した最初(そして未だに恐らく唯一)の取引所です。これは自然に調和しました。SIMD 指図を利用しているため高速(待たずに済む)で、処理能力、柔軟性、正確性が大幅に向上します。Kdb+ の柔軟性とスピードにより、当社は品揃えサイクルを2倍にすることができました。低レバレッジのインバース型クオント先物から高レバレッジのもの、高レバレッジの先物から当社の主力商品であるXBTUSD 無期限契約まで豊富に取り揃えています。その実現には、柔軟性、イノベーション、そしてチーム全員の多くの労力が必要でしたが、ここまで拡大することができ、大いに誇りを抱いています。

さて、そろそろこの記事の題名の内容について触れなければなりません。BitMEX では現在、1 日あたり 65 億ドルもの取引が行われています。1 分間での最新記録 3,500万米ドルは、2016 年 4 月全体の取引高を上回っています。

強調表示されている部分、 2016 年 3 月における XBTUSD の取引高は 1,600 万ドルでした。XBTUSD は現在多いときにはわずか 1分間でその 2 倍が取引されます。

以下のチャートでは、全体表示ではまったく確認できない詳細をハイライトするため、時間スケールを徐々に大きくした月次取引高が表示されています。

  • BitMEX エンジンの注文処理方法と証拠金の再設定方法
  • 当社システムからお客様のブラウザまでのリアルタイムにメッセージが流れる仕組み
  • BitMEX が API-First 設計を使って、業界最強の API を提供する方法
  • ホットスポット、天井と底の負荷の比較、コーナーケース(ごく稀な厄介なケース)を示すパフォーマンスチャート
  • うんざりする「システム過重負荷」メッセージの内訳、および生成の仕組み

パート 3 では、次のトピックも説明します。

  • 2017 年以降、処理能力の増大状況を示すパフォーマンスデータ
    • 過去数か月において、大きく飛躍しましたが、需要も同様に増大しています
  • 第 2 四半期のロードマップと保留作業
  • オンラインデリバティブ取引の未来に関する BitMEX のビジョン

BitMEX の成功に貢献していただき、皆さんに感謝いたします。Ben、Arthur、私は、この素晴らしい企業の一員であることを何より幸運と感じています。お客様、チーム、市場での商機はすべて単純に最高クラスに属します。

私に直接ご連絡いただくには、Twitter: @STRML_および Telegram: STRML からお願いします。また、Whalepool TeamSpeakでトレーダーと時折話しています。 これは、気軽なトレーダーコミュニティで、長年、BitMEX に有益なフィードバックや激励の言葉をいただいています。

 

BitMEX が立ち上げられた、ドブロヴニクのアパートの窓からの日常風景

1 – Starship Troopers は、ソフトウェア開発に関する見解において、時代を先取りしていました。

 

アップ契約のおすすめ

BitMEX では、初のオプション商品「アップおよびダウン」契約の取り扱いを開始します。これは BitMEX プラットフォームの商品開発履歴において、大変画期的な出来事となります。先物、スワップ、そして今回加わったオプションと、BitMEX は仮想通貨業界にあらゆる形態のデリバティブ商品を提供するという目標に徐々に近づいています。

「アップおよびダウン」契約誕生の理由

アップ契約(別名「アップサイド利益契約」)、およびダウン契約(別名「ダウンサイド利益契約」)は、コールとプットオプションに似ています。BitMEX での最大の強みの 1 つとして、コミュニティと関与して、お客様の意見に声を傾ける点が挙げられます。この業界の洗練度が上がるにつれ、こうした商品を強く求める声が当社に届いています。

今、発売する理由

ビットコインデリバティブ商品取引の流動性状況は、過去 12 か月間で大幅に変動しています。BitMEX XBTUSD 無期限スワップは、今や、仮想通貨取引業界全体で最も取引高の大きい商品であり、1 日あたりの平均取引高は想定元本で数十億米ドル規模に達しています。

オプションのような非線形的商品が存続可能になる前提として、線形商品(無期限スワップや先物)の流動性が十分に潤沢である必要があります。XBTUSD および四半期ビットコイン/USD 先物契約の流動性状況を踏まえると、成功するオプション製品の発売に必要な流動性が現在、十分存在すると当社は確信しています。

利用例

現在のビットコインの取引価格は 1 万ドルであり、週末までに、10% 高の 1 万 1,000 ドルに変動すると仮定しましょう。ただし、目標水準に達成するまで、価格リスクをとることは望んでいません。週内のスポット相場の動向にかかわらず、目標水準に達するまで、ポジションが清算されることも望みません。例えば、価格が 5,000 ドルまで下落後、決済日までに 1 万 2,000 ドルまで回復する場合、ポジションはなお利益が出ており、清算されません。

そのため、ロングサイドでは、目標の 1 万 1,000 ドル上方で取引に参加できることが望まれます。アップ契約では、この希望を表明できますが、こうした「選択性」に伴い、オプションの売り手に支払うプレミアムというコストがかかります。

購入のみ可能な理由

ネイキッドオプションの売り(ヘッジなし)は、損失が無限大となる可能性があるため、素早く簡単に大損する商品の1つです。BitMEX での取引では、損失はプラットフォームへの預託証拠金に限定されるため、オプションの売り手が予想損失を返済できない場合、損失の社会化システムを設ける必要がありますが、これは避けたいものです。その結果、当社では、アップ契約とダウン契約の名目元本の全額の預託をオプションの売り手に義務付けています。

売り手にはレバレッジが一切提供されないため、マーケットメイクをするのは資本の観点から非常に高くつきます。十分な規模でタイトなスプレッドを保証するため、BitMEX と提携するアンカーマーケットメイカーのみが当初、オプションを売却できる唯一の組織となります。

お客様の多くは、BitMEX の提携組織が唯一のマーケットメイカーであることを心配するかもしれませんが、考慮すべき点を以下にいくつか挙げました。

  1. 詳細を後述するとおり、エンジンの過重負荷という問題は、現在の登録商品について、クオートを絶え間なく更新するマーケットメイカーが多数存在することが一因です。これにより貴重なエンジンの膨大な容量が消費されます。当社はエンジンパフォーマンスが修復されるまで、問題を悪化させる新商品の登録は見送っています(多数のアルトコイン四半期先物契約の登録を解除したのはこれが理由です。この商品の取引高は消費されるエンジンリソースに見合いません)。以上の理由より、アップ契約とダウン契約のクオートを出すマーケットメイカーが 1 社のみならば、エンジンに大きく影響することはありません。
  2. アップ契約とダウン契約では、証拠金で全額カバーされる必要があります。具体的には、買い手はプレミアムを全額支払い、売り手はオプションの名目元本の全額を証拠金として預託する必要があります。つまり、決済価格の水準にかかわらず、買い手も売り手もポジションを清算されることがありません。契約がイン・ザ・マネーで決済された場合、常に、買い手は確実に利益を受け取れます。そのうえ、アンカーマーケットメイカーは顧客を清算させるために、どのような方法でも市場を上下に操作できません。
  3. アンカーマーケットメイカーの果たす役割は、市場をタイトに維持して、契約期間全体にわたり、買い手が自由自在に取引に参入・撤退できるようにすることです。BitMEX が望んでいるのは流動性の増大であり、ワイドな市場や空のオーダーブックには興味ありません。
  4. 商品に関するお客様のフィードバックに応えるために、アップ契約とダウン契約に変更が加えられる予定です。アンカーマーケットメイカーは、サードパーティより早く新商品の構造を調整できるようになります。つまり、BitMEX では、商品を早めに撤収させ、保証された流動性と共に、素早くその商品を再登場させることができます。

エンジンパフォーマンス問題への対処

BitMEX では、エンジンパフォーマンスの改善を最優先しています。詳細なブログ記事『BitMEX テクノロジーの規模拡張:パート 1』で、当社 CTO の Samuel Reed は、当社が直面する問題とこうした問題を解決するために取り組んでいることについて詳しく説明しています。その要点をいくつかここに再掲します。

解決策は、サーバーの増設やエンジニアの増員といった単純なものではありません。当社エンジンの最大処理量は、リスクチェックや計算により制約を受けます。こうした作業は、注文、ポジション、取引、価格変動ごとに実行され、100 倍のレバレッジを許容するプラットフォームでの数学的一貫性を維持できるようにします。BitMEX では直面しているこの特異な問題を解決するため、以下の 2 つの戦略をとっています。

  1. できるだけ多くの既存機能を理想化して、効率面でメリットを得ます。BitMEX では週に 1 度、改善を実施していますが、エンジンパフォーマンスの改善に合わせて需要が増大するため、追加容量は急速に消費されます。
  2. エンジンを一から再構築して、上記問題を水平的に拡張可能にします。これにより、過重負荷という問題無しに、商品とユーザーを増やすことができます。この作業は進行中であり、すぐに解決するものではありませんが、ゴールに向かって取り組んでいます。

BitMEX では、容量を十分増大するまで、エンジンパフォーマンスを悪化させる商品を登録しないことを強調しておきます。

また、どの API ユーザーがリソースで最も当社の負担になっているかも調査しています。さらに、クオート/取引比率が理想的でないトレーダーに対する API レート制限が導入される予定です。かつて私は CEO として、当社プラットフォームで流動性を提供するようトレーダーの説得に非常に苦労しました。この体験は深く私の心に刻まれ、この問題の解決策を見出し、流動性の提供を望む誰もがそうできるようになることを追求する姿勢を強めています。

アップ契約とダウン契約を発売するからといって、BitMEX が過重負荷という問題を忘れたわけでも無視しているわけでもありません。むしろ、無理のない範囲で、新商品を発表、テストし続け、1年内に XBTUSD のような広範に成功を収める新たな商品を作る必要があります。

あなたがこの問題を解決できると考える才能あるエンジニアであるなら、連絡/入社してください。当社へのご連絡は、キャリアページから、またはEメールでお願いします。幹部スタッフがあなたの資格や提案を審査します。

– CEO 兼共同創業者、Arthur Hayes

BitMEX マーケットメイクデスク

当社は最近、利用規約を改定し、BitMEX 取引プラットフォームとマーケットメイクに従事する関連組織との関係を明確化しました。

利用規約の改定

BitMEX が運営する数ある事業の中には、営利目的でのトレーディング事業があり、BitMEX プラットフォームで取引される商品の処理をしています。  トレーディング事業では、マーケットメイカーとして主に取引します。トレーディング事業は、プラットフォームビジネスとは明確に区別されるように編成されています。具体的には、トレーディング事業とプラットフォーム事業がフロントオフィスのスタッフを共有することはありません。トレーディング事業は、別の実在の場所で運営され、プラットフォームでの注文フロー、約定、お客様、その他利用規約に記載されていて、他のプラットフォームユーザーが他の方法では入手できない情報へのアクセス権を有しません。さらに、個別の BitMEX 商品の利用規約に別途記載される場合を除き、トレーディング事業は他のすべてのユーザーに提示されるものと同じ条件でのみアクセス権と取引特権を提供されます。 

マーケットメイクをする理由

以前当社は、マーケットメイカーが非常に気まぐれであることを発見しました。彼らが投資を望む唯一のタイミングは、すでに取引フローがある取引プラットフォームに接続している時だけです。また、リソースを使って接続してもテイカーが見つからない新しい取引所を試すことを嫌います。有担保での取引を強いられる場合、これによりリターンは低下します。

他者に流動性を提供する気にさせるため、新商品が登録され次第、クオートする組織に出資しました。商品の流動性が高まると、この組織は そのクオートの規模を縮小し、BitMEX プラットフォームにある流動性の低い別の商品に集中します。

現在、この関連組織の活動は、アルトコイン契約に集中しています。XBTUSD とビットコイン/米ドル四半期先物契約には、潤沢な流動性があり、毎日、新規のマーケットメイカーが参入して、オーダーブックを分厚くします。ミッション完了です… 今のところは。

当社は、新しい流動的な商品にすぐに対応できることから、他のプラットフォームではアンカーマーケットメイカー無しに取り扱えないタイプの商品を試験的に試せます。また、新たなサードパーティ流動性プロバイダーの獲得プロセスも加速しています。

インセンティブを一致させる方法

トレーディング組織は、営利事業ですが、収益は、BitMEX 取引プラットフォーム事業から支払われるサービス報酬で構成されます。取引損益に関しては、マーケットメイクデスクでは、収支ゼロを目標としています。

デスクが課題に取引損益を出すと、プラットフォーム事業はスプレッドを縮小して、サイズを増やすように指示することになります。フランチャイズとしての BitMEX の成功尺度は、取引高の増加であり、マーケットメイクデスクの取引損益ではありません。

取引所の儲けが最大になると、マーケットメイクデスクの儲けも最大になります。これは、マーケットメイクデスク側では、不正で操作的な行動は許容されないことにもなります。前述したとおり、デスクは別の実在の場所にあります。彼らに与えられる情報やアクセス権は、BitMEX の他のどのトレーダーと変わりません。トレーダーは、プラットフォームが公正でないと感じると、利用しなくなるため、手数料収入が入らなくなります。

デスクが関与する活動

主力のトレーディング活動は、BitMEX の特定商品で流動性を双方向から提供しています。デスクが現在重視しているのは、アルトコイン契約の流動性増大です。また、アップ契約とダウン契約では、アンカーマーケットメイカーにもなります。

世界中の多様な取引相手と OTC (相対)取引も行います。

上述したとおり、デスクは操作的な行動に関与しません。デスクはお客様の利益を踏みにじることはありません。ストップロスハンティングや段階的マージンコールを誘導するために、BitMEX の市場や原資産の取引所をデスクが操作することはありません。

こうした行動のいずれも過去に起きていませんし、もし発見されたら、責任者は即刻、正当な理由による解雇となります。

デスクの運営者

デスクのヘッドトレーダーは、Nick Andrianov です。以前は、ドイツ銀行でエクイティフローとエキゾチックオプションのトレーダーをしていました。Nick と私は 10 年以上前からの知り合いで,

誠実性には疑いの余地がありません。

Nick には BitMEX の多様な幹部から事業目標が寄せられます。事業とマーケットメイクデスクは、すべての BitMEX 商品をできるだけ流動的にする明確な目標の下に、密接に連携しています。

金融リスク

マーケットメイクデスクが被ったトレーディング損失は、BitMEX 取引プラットフォームの支払能力に影響しません。

上述どおり、マーケットメイクデスクは別の組織内に属します。その目標は、BitMEX およびより広範な仮想通貨資本市場に流動性を提供することです。

– CEO 兼共同創業者、Arthur Hayes

負荷制限と「クローズ」execInst

高負荷時、一部のAPIユーザーがある方向に注文を出し続けるために、Close execInstを使用していることに我々は気がつきました。我々は、このような目的でクローズ注文を負荷制限から除外したのではありません  フロントエンドユーザーが、ポジションを完全にクローズすることを可能にするのが本来の目的でした。

今後、高負荷時のCloseオーダーは、数量を含む場合はキャンセルの対象になります。ポジション全体をクローズしたい場合は、 orderQty を入力しないようお願いします。クローズ注文とともにこの欄が空欄である場合、全ポジションだと解釈されます。

2018年平均回帰ファンディング

2018年4月20日の BitMEX Crypto Digest より 著者:Arthur Hayes BitMEX共同設立者及びCEO

強力かつシンプルな取引戦略の1つに平均回帰がある。XBTUSDスワップには、8時間ごとにロングとショートの間でやりとりされるファンディング率という特徴を持つ。この率は過去8時間に観察されたスポットインデックスに対するスワップのプレミアムまたはディスカウントに基づき算定されるが、観察、公表、支払いの各ファンディング段階にタイムラグがあるため、先行指標となり得る。

ファンディング率の趣旨は、トレーダーがトレンドの逆を行くポジションを組みやすくすることにある。市場が下落している場合、トレンドに乗っている投資家(ショート派)がファンディング率を支払い、市場が上昇している場合、トレンドに乗っている投資家(ロング派)がファンディング率を支払う。トレンドは続いている限り味方になる。トレーダーの経験上、ファンディングの絶対的増加は相場動向が転換する合図になり得る。

昨年9月、筆者は単純な平均回帰型ファンディング戦略を紹介した。ファンディング率が大きい正の値である場合、ファンディング手数料を請求される直前にXBTUSDをショートする。ファンディング手数料を受領したら、8時間後にショートポジションをカバーする。ファンディング率が大きい負の値である場合、ファンディング手数料を請求される直前にXBTUSDをロングする。ファンディング手数料を受領したら、8時間後にロングポジションをカバーする。この取引の実施時期を決める基準に応じて、過去プラスの利益が出ている。

1年強のデータ(2017年3月~2018年4月)を根拠として、この戦略の過去のリターンを計算した。この取引をきっかけに、正と負の側の平均から1および2つの標準偏差が起きている。以下がその結果である。

平均Bps 1.5346
標準偏差Bps 17.1951
シグマ ファンディング率 カウント パス率(%) 累計ファンディング 累計XBTUSDリターン 累計リターン 合計観察率(%)
-2 -32.8556 48 47.92% -17.75% -12.52% 5.23% 4,10%
-1 -15.6605 101 52.48% -21.99% -0.80% 21.19% 8,63%
1 18.7297 80 42.50% 20.46% 63.61% 84.07% 6,84%
2 35.9249 92 53.26% 34.46% -59.12% -24.66% 7,86%

シグマ – 平均からの乖離の標準偏差値。

カウント – 負のファンディングについて、この値はファンディング率がシグマ未満(ファンディング率は負)または超(ファンディング率は正)である観察件数。

パス率(%) – シグマが負の場合、次回ログの8時間リターンが正である観察件数の率。または、シグマが正の場合、次回ログの8時間リターンが負である観察件数の率。

累計ファンディング – カウント標本セットの観察からの合計受領ファンディング手数料。シグマが負の場合、XBTUSDをロングして、ファンディング手数料を受領する。これにより、累計ファンディングが負と表示されていても、この額を所得として受領する。

累計XBTUSDリターン – カウント標本セット観察の次回ログ8時間リターンの合計額。

累計リターン – この平均回帰戦略から得られる収益。XBTUSD取引からのファンディングによる純リターンに等しい。

合計観察率(%) – [カウント / 合計観察件数]

この単純化した考察で最も収益率の高いレンジは、1~2シグマ(絶対値)である。この結果は、ファンダメンタル的に理に叶っており、ファンディング率のピーク時に、トレンドに逆らう取引をしても、トレンドの継続に伴い手痛い目に遭う。ご存じのように、ビットコインは扇情的な市場であり、高値と安値の振り幅が大きい。

急騰や急落局面が長引きファンディング率が落ち着き始めたら、転換期となる可能性が大きい。その時点でトレンドの逆を行く注文を出せば、ファンディング手数料と相場変動利益の両方が得られる。

さらに高度な統計を駆使するトレーダーであれば、XBTUSDのファンディング率を軸に、より周到で精密な平均回帰戦略を構築できる。筆者が実施した分析用データはすべて当社の公開APIから無料で利用可能である。この考察は、冷静な分析型トレーダーにとって、ビットコインがなお投資妙味溢れる市場であるもう1つの証拠である。

仮想通貨ブームの後遺症

2018年4月20日 BitMEX Crypto Digest より 著者:Arthur Hayes BitMEX共同設立者及びCEO

急騰に沸いた12月の後、仮想通貨は「市場」という荒波にもまれた。ボラティリティは申し分ない。だが、多数の投資家は、乱高下で損失を膨れ上がらせた。痛手を負ったトレーダー、ヘッジファンド、ICO発行企業が情報を錯綜させる。それでも、相関性のないリターンという黄金を求め、この新しい刺激的な業界に踏みとどまる投資家は多数いる。

 

成功報酬なし

筆者のLinkedInの受信箱には仮想通貨ヘッジファンド創設通知が届かない日はない。第2四半期末までには、登録仮想通貨ヘッジファンドの数は数百規模に達すると様々なメディアが報じている。

こうしたファンドの大半は買い持ちのみである。つまり、こうしたファンドマネージャーの狙いは支払い超過のベータ商品にある。ベータそのものに問題はない。ただ、アルファを期待すると、手痛いしっぺ返しに遭う。

数千ドル(時には数百万ドル)を気前よく投じていた投資家は損失で首が回らなくなっている。ヘッジファンドマネージャーの友人数人に尋ねると、集金ペースは予想より遅いと言う。

中級レベルのファンドマネージャーは裁定取引をしながら、米著名投資家のスティーブン・コーエンクラスに仲間入りすることを期待した。確かに彼らは通常より成功したが、仮想市場ではリスク管理が鉄壁でなければ、破滅するという教訓を得た者もいる。どんな不運もリターンに悪影響を及ぼした。スプレッド取引で証拠金要件を満たせなければ、成功の道は閉ざされる。

ジョン・ポールソンの後継者を夢見た多数のファンドマネージャーは、仮想通貨取引の難しさを思い知ることになった。市場は不安定で、先が読めない。実績や理論どおりに「動かない」のだ。

ICO、先延ばしされた夢

どの技術チームも、今やICO戦略を必要とする。見かけ倒しのWebサイトや調子の良いホワイトペーパーで知識不足の投資家が資金を拠出してくれたら、儲けものだ。ICOラッシュは収まる兆しを見せないが、2017年に発行されたトークンは、現在そのICO価格を下回るレベルで取引されている。

筆者は、ICOとは技術プロジェクトの資金を調達する革命的な方法であると確信している。また、インターネット接続と数枚のビットコインかイーサがあれば、誰でもプロジェクトの成功にあやかるべきだ。だが現実には、ICOは熱狂的な私募手法と化している。

ICO取引が巨大化する過程で、サフト(SAFT)という怪物が必然的に生まれた。公募ICO発行の参加者であった小口投資家は、SAFT手法で実施される私募には参加できない。Telegramは、このSAFT形式の発行でプロの投資家から20億ドルを超える資金を集めた。見事な手法であるが、これは真のICOと考えるべきでない。

旧型ベンチャーキャピタル投資家は、SAFTを歓迎した。従来の段階的ファンディング手法とよく似ているためだ。SAFTは換金性に優れており、流通市場でのリテール投資家に素早く売りさばくことができる。ところが、市場にはさばききれないほどのトークンが溢れている。ICO市場は停滞し、主力通貨のイーサも巻き込まれた。

新規発行トークンの投資家の多数は、リテールの支持がなくては、自分たちがベンチャーキャピタル内で厄介者を押しつけ合っているだけだと気づくことになるだろう。残念ながら、こうした厄介者はすぐ時価評価され、わずか数パーセントのリターンしかもたらさない。

これは、「ICOの終焉」宣言でなく、むしろ、ICOが過去の栄光を取り戻すことを意味する。基本に立ち返る必要があるのだ。市場を復活できるのは、SAFTを否定し、トークンの公正な一般公募を実際に実施できるチームである。大成功するプロジェクトもあるだろうが、大半のトークンは現在、そして今後も投資する価値はない。

全市場の取引

金融メディアは仮想通貨をもてはやす。パトス(哀愁)と興味深い性質を持つためだ(著名投資家ブロック・ピアスの風変わりの帽子みたいに)。素早く儲ける次の投資話を探す読者は仮想通貨に関するあらゆる記事を読み漁る。重要:仮想通貨市場の現状把握のためにBloombergを読む習慣があるなら、仮想通貨以外の市場にも目を配っておく必要がある。

第1四半期に相場が2万ドルから6,000ドルに急落した理由は多数考えられる。米国税金関連の売り、規制を巡る懸念、ICOのスランプ、じり貧状態の投げ売りなどが妥当な理由だろう。これらに、1年で20倍の急騰という単純な事実を加えれば、相応の調整局面はあってしかるべきだ。

いかなる相場も一直線に上昇/下降しないという単純な理由はなかなか受け入れられない。理由は常に存在しなければならないものであり、エディターにとって妥当に思える解釈をこねくりまわす。

優秀な仮想通貨トレーダーは、強気と弱気の両サイドだけでなく、トレンドと不規則市場の両方で取引する。ただ、このタイプのトレーダーにはめったにお目にかかれない。成功するには、こうしたトレーダーを手本にし、現況がふさわしくなければ様子見する。

現在、市場は不規則モードにあり、1万ドルの急落後、6,000~1万ドルのレンジで推移している。ビットコインの良い点は、このレンジが広く、突如動くところだ。戦略に忠実なトレーダーにとって、こうした不規則相場は稼ぎ時だ。

Telegramのチャットルームに座り、ネットで情報を読み漁る投資家が狂乱的ブームの立役者となった(気の毒なことに損を抱えたが)。今も市場に関わり続けるトレーダーは、コツコツ努力すれば、報われると身をもって認識している。仮想通貨市場は、本当の意味で自由である世界で唯一の資産市場だ。これは、市場を学ぶ者を興奮させる事実である。高級車に乗り、ドンペリニョン「列車」を注文する生活を夢見る投資家にとっても。

追記:「列車」の意味がわからなければ、クラブで注文してみるとよい。勘定書きを見て、心臓が止まるかもしれないが。

死後の楽園を求めて

地上の楽園には一気に辿り着けない。第1四半期は大暴落だった、第2四半期は調整局面になろう。

規制当局の脅しや爆弾発言にもかかわらず、相場が5,000ドルを割り込むことはなかった。ビットコインは健在であり、相場は安定性に欠けるが、仮想通貨、デジタルトークン、ICOに関する知識は今まで以上に広まっている。総合的には好ましい状況だ。

今や、株式より仮想通貨市場の登録ユーザーの方が多い取引業者は多数ある。こうした市場に対する取引需要は取引業者の許容量を超えている。仮想通貨には未来がある。この分野にすっかりなじんだトレーダーは、今後も株式や債券より仮想通貨投資を選び続けるだろう。

今後、3か月の相場展開は読めないが、センチメントはシフトしつつあると直感している。次の勝負所は1万ドルとなるだろう。このレベルを相当期間維持できれば、2万ドル復活へと上昇が見込める。