ビットコイン開発に資金を提供しているのは誰か?

原文: Who Funds Bitcoin Development?

要旨: オープンソースのビットコインとライトニングの開発に資金を提供している主な組織と個人をリストアップしました。当社がまとめたデータによれば、BlockstreamとLightning Labsは、この分野のオープンソース開発における最大の貢献者です。またBitcoin Coreへの貢献という点では、現在Chaincode Labsが、その開発における最大の財政的支援者です。現在、資金の利用可能性、透明性、資金的支援者の分布度合いという点では、以前よりも健全な状態にあると結論付けることができます。

一般に公開されている情報と、情報が公表されることに同意している個人へのインタビューに基づき、以下のチャートと表を作成しました。これらは、オープンソースのビットコイン開発者の資金調達の状況を最も包括的に伝えるものであると考えられます。

最初のチャートはトップダウン方式で作成されたものです。当社は、オープンソースのビットコイン開発に直接資金を提供する最大の組織を特定しました。オープンソース・ビットコインまたはライトニング関連のプロジェクトに取り組む開発者を最も多く雇用しているのは、Blockstream と Lightning Labs であることが分かります。

ビットコインやライトニングに取り組むオープンソース開発者の現在の資金調達状況 – 開発者の数

 


(出所:BitMEX Research)

(注: データには、資金源を持っている機関のみが含まれます。)

2 番目のグラフは、ボトムアップ的に作成したものです。Bitcoin Core プロジェクトを観察し、これまでのコミット数で上位 33 の貢献者を特定し、各開発者の現在の資金源を見出そうとしたものです。このチャートから、Chaincode Labsがビットコイン開発における最大の財政的支援者であることが分かります。

Bitcoin Coreに対する貢献者のコミット数別上位33社の現在の資金調達状況 – 開発者の数

 

出所:BitMEX Research, GitHub

次の 2 つの表は、上記のグラフの元のデータを示したものです。

オープンソースのビットコイン開発に資金を提供する主な企業

企業

営利企業

場所

資金源

開発者

Chaincode Labs

×

ニューヨーク

2名の創設者、Alex Morcos aとSuhas Daftuarが資金を提供

同社には6名のビットコイン専任開発者がいる(Alex Morcos、Suhas Daftuar、John Newbury、Russ Yanofsky、Marco Falke、Carl Dong)。–
出所: https://chaincode.com/#team

MIT DCI

×

ボストン

寄付

MITには、2名のビットコイン専任開発者(Wladimir van der Laan と Cory Field)と4~5名の研究者がいる。–
出所: https://dci.mit.edu/team

DG Lab

東京

日本の上場企業

同社には、2〜4名のビットコイン開発者がいる。

Square Crypto

×

サンフランシスコ

上場会社であるアメリカの決済会社、Square Incが出資

4名の開発者すべてがRust Lightningの構築に参画。また同社は、3名のビットコイン開発者に助成金を提供。

Blockstream

ビクトリア(カナダ)

ベンチャーキャピタルによる出資

同社には2名の専任ビットコイン開発者(Pieter Wuille および Andrew Chow)、3名の専任ライトニング開発者(Rusty Russel、Christian Decker、Lisa Neigut)(C-ライトニング)、3名の暗号学者(Andrew Poelstra、Tim Ruffing、Jonas Nick)がいる。

Lightning Labs

サンフランシスコ

ベンチャーキャピタルによる出資

同社には、オープンソースのライトニングソフトウェア(LNDとLoopd)に取り組んでいる少なくとも8名の開発者がいる(Olaoluwa Osuntokun、Conner Fromknecht、Alex Bosworth、Johan Halseth、Joost Jager、Wilmer Paulino、Carla Kirk-Cohen、Oliver Gugger) – 出所: https://lightning.engineering/team

Purse

サンフランシスコ

 

同社には6名のビットコイン開発者(パートタイムの可能性あり)がおり、Bcoinのようなプロジェクトに取り組んでいる。 出所: https://twitter.com/MatthewZipkin/status/1243895873626611714

         

Acinq

パリ

ベンチャーキャピタルによる出資

同社には、オープンソースのビットコイン/ライトニングについて少なくとも4名の開発者がいる。

Bitfinex

 

剰余金

同社では、RGB(ライトニング上でトークンを発行するためのツール)に取り組んでいる3名の開発者に資金を提供している。

Xapo

サンフランシスコ

ベンチャーキャピタルによる出資

同社には、専任のビットコイン開発者が2名いる。

OKCoin

中国

剰余金

現在、1 名のビットコイン開発者に助成金を提供している。

Bull Bitcoin

カナダ

 

現在、Cyphernodeを構築するビットコイン開発者1名に資金提供している。

BitMEX

セイシェル

剰余金

現在、1名のビットコイン開発者に助成金を提供し、Bitcoin Coreに貢献する1名のパートタイムの請負業者がいる。

Crypto Advance

ミュンヘン

民間からの寄付

Stepan Snigirevのオープンソース開発作業に資金を提供

Hardcore Fund

×

 

寄付

2名のビットコイン開発者に少額の助成金を提供

Bitmain

中国

剰余金

同組織は、積極的に開発資金を提供しているわけではない。Bitmainは、以前、少なくとも2名の開発者をサポートしていた。

Blockchain.info

ロンドン

ベンチャーキャピタルによる出資 

同組織は、積極的に開発資金を提供しているわけではない。Blockchain.infoは以前、少なくとも1名の開発者をサポートしていた。

Bitcoin Foundation

×

ロンドン

寄付

同組織は、積極的に開発資金を提供しているわけではない。以前は、開発に資金提供を行なう数少ない組織の1つであった。

BTCC

中国

剰余金

同組織は、積極的に開発資金を提供しているわけではなさそうだ。

BitPay

米国

ベンチャーキャピタルによる出資

同組織は積極的に開発資金を提供しているわけではなさそうだ。以前は、Jeff Garzikがビットコイン開発に取り組むために資金提供を受けていた。

ビットコイン開発者とその資金提供者一覧

開発者

説明

資金

Bitcoin Core メンテナー

Wladimir van der Laan

Bitcoin Core メンテナー

MIT DCI

Pieter Wuille

Bitcoin Core メンテナー

Blockstream

Marco Falke

Bitcoin Core メンテナー

Chaincode

Michael Ford

Bitcoin Core メンテナー

BitMEX

Jonas Schnelli

Bitcoin Core メンテナー

以前はBitmain

Samuel Dobson

Bitcoin Core メンテナー

John Pfeffer

Bitcoin Coreへのコミット数による開発者ランキング (歴代)

Matt Corallo

ビットコイン開発者(現在は、Rust Lightningに従事)

Square Crypto (以前は Chaincode および Blockstream)

Cory Fields

ビットコイン開発者

MIT DCI

Practical Swift

ビットコイン開発者

 

John Newbery

ビットコイン開発者

Chaincode

Gavin Andresen

ビットコイン開発者

以前は Bitcoin Foundation および MIT DCI

Luke-Jr

ビットコイン開発者

Hardcore Fund

Russell Yanofsky

ビットコイン開発者

Chaincode

Andrew Chow

ビットコイン開発者

Blockstream

João Barbosa

ビットコイン開発者

以前はBitmain

Suhas Daftuar

ビットコイン開発者

Chaincode

Alex Morcos

ビットコイン開発者

Chaincode

Hennadii Stepanov

ビットコイン開発者

 

Jorge Timon

ビットコイン開発者

以前はBlockstream

Gregory Maxwell

ビットコイン開発者

以前はBlocksteam

Gregory Sanders

ビットコイン開発者

Blockstream

Karl-Johan Alm

ビットコイン開発者

DG Lab

Ben Woosley

ビットコイン開発者

Hardcore Fund

Peter Todd

ビットコイン開発者

以前はBTCC、BitfinexおよびChaincodeより資金を受領

James O’Beirne

ビットコイン開発者

現在、ChaincodeからDG Labに移行中

Sjors Provoost

ビットコイン開発者

以前はblockchain.infoが資金を提供し、BitMEXのためのオープンソースプロジェクトのパートタイム

Patrick Strateman

ビットコイン開発者

以前はBlockstream

Carl Dong

ビットコイン開発者

Chaincode

Jon Atack

ビットコイン開発者

Square Crypto 助成金

Anthony Towns

ビットコイン開発者

Xapo

Jeremy Rubin

ビットコイン開発者

以前はMIT DCI および Chaincode

Nicolas Dorier

ビットコインおよび BTCPAY 開発者

DG Lab

David Harding

ビットコイン開発者

 

注目すべき資金源を持つその他の開発者

Fabian Jahr

ビットコイン開発者

OKCoin

Kukks

BTCPAY 開発者

BTSE

Amiti Uttarwar

Bitcoin 開発者

Xapo

データの免責事項と弱点:

  • 上記のチャートは、資金源の分布を説明するための基本的なガイドとなることを意図したものです。
  • 開発者の数は、資金提供者の全体的な貢献度を完璧に示す指標ではありません。フルタイムの従業員として資金を提供されている開発者もあれば、パートタイムの仕事のため、少額の助成金を受けている場合もあるため、資金額を反映するものではありません。
  • コミット数は、開発者による貢献度を示す指標としては非常に弱いものであり、示唆的な代替指標として扱われるべきものです。
  • 開発者をコミット数でランク付けするのは、説明することだけを目的としたものです。レビュー作業は重要であり、コミットメント数に反映されていません。
  • 開発者コミットの歴代ランキングを使用しましたが、過去 2 年間のランキングを見るのが有効な場合もあります。
  • 一定の開発者の資金を見逃している可能性があるため、表示されているデータは、全体像を明らかにしていない可能性もあります。

結論

資金調達状況は改善する可能性があるものの、データからは、資金提供者の分布や透明性などの指標に基づけば、開発者の資金調達面におけるエコシステム(業界全体の収益構造)は、比較的良好な状況にあると言えます。もちろん、資金調達の分布はさらに改善される可能性があり、Chaincode Labsが現在、Bitcoin Coreの開発者資金の面でリーダー的存在であることは明らかです。一方、重要な資金提供機関がThe Bitcoin Foundationの1機関のみであった2012年から2014年と比較すれば、資金調達源は以前よりもはるかに拡大しています。

特に希望が持てるのは、最近、BitMEX、BTSE、OkCoinが登場したことです。これによって、必要とされる寄付者の多様化がもたらされ、持続可能なレベルは向上する可能性があります。特にこれらの取引所は新しいタイプの機関であり、寄付やベンチャーキャピタルファンドを利用するのではなく、利益剰余金によって開発者に資金を提供しています。

今後の最大の課題は次の通りです。

  • 新規参入する新しい開発者に対する資金提供とトレーニング
  • 様々なビジネスモデルを持つ企業からの利益剰余金による資金提供の比率を高めるなど、開発者に対する、より持続可能な資金提供
  • それぞれ独立した資金源から資金提供を受けながら、開発者が効果的に協力できるようにすること

ご留意事項

当社は、このレポートのデータに正確を期していますが、間違っている可能性もあります。誤謬や脱落を発見された場合は、当社までご連絡ください。