フィクションを選択せよ

原文:Choose your Fiction
Forky (出典:Pixar Animation Studios

摩訶不思議! ポンと指を鳴らした途端、COVIDは消え失せ、ロックダウンから脱出し、あなたは今まで通りの人生を歩み続けることができるようになった。気分はどうだろう? 1月と同じくらい楽観的でいられるだろうか? 政府はあなたの健康と安全を第一に考え、タイムリーに真実を話してくれると信じられるだろうか? それとも都合のいいようにデータをごまかすだろうか? メディアが、権力側の真実を暴くと信じられるだろうか? あなたは1時間毎に徹底的に手を洗うのか、それとも、そんなこと構っちゃいられないとばかりに、目や鼻や口を平気で触るようになるのか?

こうした疑問の嵐から抜け出すことができて初めて、すべては今年の1月上旬の状態に戻ったと言うことができる。幸せな日常だ。景気はV字回復するかもしれない。しかし、私が思うように、もしあなたの世界観が根本的に変わったのだとすれば、あなたの人生を支えていたフィクションも劇的に変わってしまったということだ。最も重要な価格、すなわちお金の価格とその性質のことを考える際には、私たちが信じている共通のフィクションを予測することが最も重要になる。

お金、すなわち産業的有用性と強い繋がりのある真のお金は、労働と資本を効率的に交換することで、実際の商品やサービスを生み出すことができるというフィクションに過ぎない。このフィクションがなくなれば…もはや現代社会の利便性は消え失せる。よく知られた金融に関するフィクションは3つ存在するが、COVID後の時代において、その相互関係は今とは全く異なるものとなるだろう。

政府発行通貨、別名USD = フィクション + 暴力

私たちは、必要があれば銃を突きつけられ、借金や税金はいずれ取り立てられることになるため、米ドルには価値があるということを知っている。米国は自国の債務を返済するために税金を引き上げることができると強く信じられているからこそ、ドルには価値がある。

金(ゴールド) = フィクション 物理的な希少性

金は、産業において広範囲に利用されてきたわけではない。ただ光沢があり、物理的に不足していて、可鍛性があり、何千年もの間、人々の注目を集めてきたというだけだ。そういう意味で、金には価値がある。

ビットコイン = フィクション 暗号による希少性

ビットコインに価値があるのは、オープンソースコードが、2,100万単位しか決して存在しないよう多くの保証人によって、集合的に管理されているためだ。だからこそ、ビットコインには価値がある。

第二次世界大戦で、人々の生活が愚かにも破壊された後、勝者がブレトンウッズに集まって、USDを基軸通貨とする近代的な金融システムを創造した。私たちは、今日でも、米ドルのくびきの下にいる。

かつてUSDには、金の重さだけの価値があり、1971年までは、きっかり1オンスあたり35ドルだった。狡猾なニクソン元大統領は、自宅に居ながらにして、人々に「餌」をばらまきながら、戦争をしたかった。「バラマキが欲しければ私に投票せよ!」と。それが選挙に勝つための最高の方法だ。しかし、彼は、国が保有する金への取り付け騒ぎには我慢がならなかったため、お金と金(ゴールド)との関係を断ち切った。それ以来、USDの価値は、完全に、信頼に依存するものとなった。

時を早送りして、2020年1月へと話を進めよう。米国には最も流動性の高い金融市場があり、すべての資本に対して完全に開放されている。すべての主要商品と取引は、ドル建てで価格設定されている。したがって、国際的なビジネスを行なう国や企業は、そうしたドルにアクセスする必要がある。

景気が良いときは、それは誰にとっても素晴らしいことだ。連邦準備制度理事会(FRB)には、ドルを、安価で十分に供給し続けるグローバルな義務がある。だからこそ、主要中央銀行との間にFXスワップラインが存在する。世界ではドルが不足しており、上品でアカデミックに見える連邦準備制度理事会の総裁だけが、それらを提供できる。

国や企業は、金持ちのアメリカ人に、ガラクタを売ることによって簡単にドルを稼ぐことができる。アメリカのGDPの70%は消費によって支えられており、それは世界中に影響を及ぼす。何億人もの農民が、悲惨な貧困状態から抜け出し、iPhoneやエアジョーダンやF150を生産するための安上がりな労働力となっているため、その親である「アメリカ」企業は、記録的な利益率を享受することができる。

ヨーロッパ人も、消費という意味において、それほど遅れを取っているわけではない。欧米は共に、世界の物への需要を象徴している。彼ら以外にいったい誰が、こんな狂気の沙汰の値段で、このくだらない代物を買うというのだろう?

鄧小平は、南巡講話において、中国を100年の眠りから目覚めさせ、世界に向けて解き放った。彼らは、製造業を西側から東側へと移行させることにより、莫大な富を得た後、高級品、旅行、教育などの分野を活性化し始めた。

衒学的で申し訳ないが、私は現代のソローではないし、明らかに彼のように池畔で生活しているわけではないから、概念的な話を長々とするつもりはない。簡潔に言おう。中国は、アメリカ人とヨーロッパ人が買うくだらない代物を、ドル建てで売っている。

ところがどっこい、COVIDが発生…中国はこのウイルスと戦うために生産を停止した。すなわち、ドル収入がなくなった。そして、アメリカ人とヨーロッパ人にも感染し経済を停止した。つまり、需要は、もうない。

中国が再びビジネスを「再開」し、物作りを始めたときには、もはや西側からの注文はない。なぜなら、彼らは皆、自宅でPornHubを視聴し、ウーバーイーツを注文しているからだ。自宅でのんびりできない人がいるとすれば、それは、馬鹿高い医療費の請求書がいつ届くかと気をもんでいる人たちだろう。この残念な話の要点は、今、中国はドルを稼いでいないという事実だ。

中国だけではない。製造やサービスの主要なハブは、少しもドルを稼いでいない。しかし、彼らは一次産品を買うために支払う必要があり、ドル建ての負債も返済しなければならない。彼らの中央銀行がドルを印刷することができれば、すべてあぶく銭になるのだが、おっと残念!そうは問屋が卸さない。

新興通貨の小さなメルトダウンが、3月末に発生した。FRBは、スワップラインを提供する中央銀行を新たに増やすことで対応したのだが、中国には提供しなかった。この措置により、少しプレッシャーが和いた。しかし、CDX EM HY CDSスプレッドを見てくれ。まるで、ウエストハリウッドのパンクヘアのようだ。

一般的には、FRBは、ドルが十分に安くなるまでお金を印刷することができると考えられる。しかし、米国の銀行は、USDを買い込み、貸し出しを拒否する傾向がある。彼らが紙幣を印刷できず、世界的な不況下でリスクを取るのには、さまざまな規制上の理由が関係している。安全第一で、堅実なバランスシートを確保する方が良いからだ。

単純な話だ。FRBは好きなだけ米ドルを印刷することができるが、それが、最も必要としている企業や国の手に渡ることはない。中でも最も重要なのは中国だ。中国の通貨は兌換通貨ではなく、西側ヨーロッパやアメリカは、このウイルスの責任は中国にあると考えている。それが真実か否かはどうでも良い。中国経済がこのCOVIDのパンデミックのさなかも生き延びることができるよう、米国の政治家たちが立ち上がって、FRBに紙幣を刷るよう要求するだろうか?

このウイルスは、元々、武漢の生きた動物の市場で発生したと考えられている。そして西側は、中国政府が、その深刻さについて軽視したり、嘘をついたりしたと考えてる。それから、突然、国境を封鎖した。深刻な問題だったからだ。残念ながら、数百万人の感染した中国人が世界中に出かけて行って、どんちゃん騒ぎが始まった。真実が何なのかは、ここでも重要な問題ではない。語りがすべてを支配する。今年は選挙の年で、中国へのバッシングが本格化している。かの有名なアメリカのコメディドラマ『となりのサインフェルド』の第16話『スープナチス』の始まりだ。「あんたに渡すスープはないよ!」と断られる客のように、「あんたに渡すドルはないよ!」と。

米ドルはとにかく強い。強すぎて世界経済を破壊してしまいそうだ。

嵐を乗り切るために適切な量の財政刺激策を、確実に実行できるのは、米国だけだ。金融システムの信用力を保ちつつ、庶民を安心させられるだけの経済活動を創造するのに必要な通貨の切り下げを選択できる国は、米国以外にはない。すべての一次産品は、ドル建てで価格設定されているということを忘れないように。政府の負債をマネタイズするために、紙幣を印刷し過ぎれば、通貨が急落し、インフレが横行するだろう。そうなれば、ジャコバン派が通りに現れ、ケーキを頬張っている場合ではなくなる。

以上が、今後10年間に予想される展開を簡単にまとめたものだ。タイミングは分からないが、強い米ドルはこれまでの世界経済に終わりを告げ、リセットを突き付けてくるだろう。問題は、新しいシステムがどのようなものになるかだ。

私の魂の考えを知ってもらうために、私のポートフォリオを見て欲しい:

ロング USDCNH 2年 8.00 コール
ロング USDKRW 1年 1600 コール
ロング CDX EM CDSI Sprd(まだこれは手に入れていないが、私が目標とする水準にまで市場がリバウンドするのを待っているところだ)

各国中央銀行は、ハードなデジタル資産に対する通貨価値の切り下げを行うだろう。そのデジタル資産が何であるかということに関しては、私には分からない。しかし、それはビットコインへのリンクを含むかも知れない。

米ドルのフィクションは終わった。新たな精神的支えが必要な時だ。

物理的または暗号による希少性を信じるか?

法定通貨に対する社会的な崇拝が終わりを告げると、市場の振り子は、信頼できる希少な存在へと大きく振れるだろう。従来なら、投資家は、ドルが強いときは、金やビットコインの価格は低下すると予想する。

しかし、ドルが入手できなくなり、政府によって創造された化け物通貨に対する信頼は失墜するだろう。金は、歴史的に見て最良の選択肢だ。多くの中央銀行も金を所有している。通貨の新たなベースを設定する最善の方法は、金の価格を極端に引き上げることだ。同じことが、1970年代の石油危機のときにも起こった。FRBは、米国債の利回りが20%であるときに、金を所有しているのがばかばかしくなる水準にまで金利を引き上げたのだ。

今回は、FRBは利上げができない。そんなことをすれば、すべての人々に無償で補償しなければならない現状において、米国政府の財政は破綻してしまうだろう。今は、全国民に対する前代未聞の量的緩和の時であるということを忘れないで欲しい。米国の有権者たちは、これ以外の、排他的な経済救済は認めないだろう。そうした政府の救済金は、人々が、自動小銃を使ってウイスキー税反乱の現代版を開始することなく、人気のNetflixシリーズ、『タイガーキング』を見て、おとなしく家にいてもらうために支払われるのだ。

したがって、ブレトンウッズ体制の遺産が崩壊するなか、人々を金から遠ざけることができるだけの代替資産はない。自由の国、米国の株式市場は、政治的なツールになるだろう。FRBから力を得た米国財務省は、すべての政府債務と企業債務を買い入れるだろう。株式も買い入れるだろう。消費者ローンも買い入れるだろう。政府がインデックスを買うなら、株式市場こそ、投資すべき場所だと思うかもしれない。しかし、1989年の日経平均を思い出して欲しい。日銀は現在、日本の株式市場の30%以上を保有しているが、日経平均は依然として過去最高値の半分にも満たないのだ。そして、私は今、名目値でしか語っていない。これを、日銀のバランスシートでデフレートしてみてほしい…もうボロボロだ。

かつての強大な米国株式市場は、かつて多くの顧客を有し、米国の納税者たちから富を吸い上げるべく機能していたが、今は死に体となってしまった大企業を囲いに入れるための牧場と化すだろう。インフレを抑えることができれば、それもそんなに悪いことではないかもしれない。しかし、世界が回復を遂げるにつれて、有限の実物の品物を、無限の法定通貨で追い求めることになるのだ。中小企業は、ほとんどの国において、経済の60〜80%を占めている。こうした企業は、規模が小さく、顧客も限られているため、信用と引き替えに高い価格を支払いる。政府による気前のいい中小企業融資プログラムをすべて使ったとしても、中小企業の大部分は、実際にそうした資金が利用できるようになる前に、死に絶えてしまうだろう。複雑なシステムは、一筋縄では回復しないのだ。

したがって、無限の財政・金融支援補償は、存在しない供給を追い求めることになる。それがインフレにつながるのだ。また世界の株式市場も、資本の効率的な分配を行なう場ではなく、政治的なツールとなるだろう。誤ったシグナルが発せられ、誤った商品が生産されるだろう。『となりのサインフェルド』に出てくるような間抜けなヒップスターたちに、40ドルのアボガドトーストが買えるだろうか?

人類史上最高のインフレヘッジ商品である金には、より高い価格が設定されるだろう。「フィクション+物理的な希少性」を信じる人にとって、金は所有できる唯一の資産だ。価格はどこまで上がるだろうか?信用合計額に対するベースマネーの比率を取る。その乗数が、金の未来を占う指針として機能する。

考えられるもう一つの帰結は、USD建てではないデジタル金融システムの創造だ。

彼らが大胆にも表に出てきて、[ドル]基準の正当性を主張し、それを防衛しようとするのなら、我々は、この国と世界の生産を支える大衆を味方につけて、とことん戦うだろう。我々の後ろには、商人、労働者、労苦を背負ったすべての人々が控えているのだ。我々は、[ドル]標準を求める彼らに対して、こう答えるであろう。労働者たちの額にいばらの冠を押し付けてはならない。[USD]の十字架の上に人々を貼り付けにしてはならない、と

2020年民主大会でのサトシ・ナカモトの演説

中央銀行を率いる陰謀結社は、デジタルハード仮想通貨を使って、彼らの通貨をリベースするだろうか?もしかしたらそうするかもしれない。中央銀行が十分な量の金を保有するようなデジタル法定通貨のバスケットは存在するのだろうか?存在するかもしれない。

もしかしたら、デジタルマネーの中で最も信頼性の高い形態であるビットコインを設定することが、最良の選択かもしれない。すべての信頼のかたちが消え失せた。需要と供給の壊滅状態を解決するため、各国政府は、史上最大の財政刺激策に乗り出すだろう。人口の30%が失業しているため、それを税金で賄うことはでない。紙幣を印刷することによって、賄うことになるだろう。その意外な帰結として、国民に直接お金を交付するために、政府が自国通貨をデジタル化しなければならないだろう。これによって、大衆はデジタルマネーについて学ぶことになる。法定デジタル通貨を理解したら、インフレの被害を回避するための確実な形態を探し求めるようになるだろう。仮想通貨Libraがデジタル通貨の喜びを大衆に伝えると思っていたのに、誰もがモバイルアプリを介して、仮想通貨Basicで食品配給券を消費していく様子を想像してみてほしい。

世界的な封鎖が行われている間に、中小企業は破綻してしまうため、商品の供給が十分に行われなくなるということを忘れないで欲しい。必需品にはインフレが生じ、必需品ではない、皆が欲しいと思うものにはデフレが生じる。デジタル金融、すなわちビットコインが富の保全の役割を果たすのだ。これで以上言うことはない。もうよくお分かりだろう。

この結論にたどり着くまでに多くの言葉を費やした。さあ、取引を始めよう。

相関1

世界的なマージンコールが生じるなか、市場はレバレッジに制裁を加えるだろう。

世界的なマージンコールが生じるなか、すべての流動性資産は、非流動性資産を保有するための資金を確保するために売却される。

世界的なマージンコールが生じるなか、相関 = 1 だ。

現在、リスクの高いすべての資産に対して、世界的なマージンコールが生じている。すべての資産クラスが制裁を受けているのは、ウィークハンズが自らのショート・ボラティリティ戦略に資金を供給するためにレバレッジを利用していたからだ。

BitMEXの未決済建玉は半値になった。レバレッジを利用していたトレーダーは、決済を余儀なくされた。ビットコインを担保に、マイナーにドルを貸していたプラットフォーム(皆、ドルを必要としている)は、市場で損切りが拡大するにつれ、強制売却へと動く。

レバレッジは、他のすべての資産クラスと同様、制裁を受けた。しかし、相対的には、第1四半期のビットコインは、依然としてS&P 500を上回っている。S&P 500との相関は、局所的な最高値に達した。

レバレッジは、損失を被って消滅した。BitMEX XBTUSDスワップの未決済建玉が、再びゆっくりと立ち上がり始めている。トレーダーがよろよろと立ち上がり、インフレ予想が世間に浸透するにつれて、インフレヘッジを求める動きが本格的に始まるだろう。

これは、世界的に再びバランスを取り始めたことを示す序章だ。レバレッジが引き起こした価格の歪みのすべてが、狡猾に利用されるだろう。自己責任で押し目買いをして欲しい。

ビットコインはレバレッジなしで所有されるようになるだろう。価格は、再び3,000ドルを試すことがあるだろうか?もちろんだ。S&P 500がロールオーバーして2,000を試す展開になれば、すべての資産クラスが再び損切りに走るだろう。第1四半期の資産価値の崩壊が激しかったように、私たちは、旧体制を解体するには、ほぼ100年の不均衡を正さなければならないのだ。私の2020年末の価格目標は、依然として20,000ドルだ。

誰もが変化のときだということを知っている。だからこそ、各国中央銀行や政治家たちは、この問題にあらゆる手段を使って対処するだろう。もう一度言う。その変化とはインフレだということだ。より多くの法定通貨が、横ばいあるいは減少傾向にある実際の商品や労働の供給を追い求めるからだ。新しいシステムが何であれ、この変化の時期に所有すべきものは2つしかない。それは、金とビットコインだ。

私のことを、たわごとばかり言うやつだとか、カサンドラ症候群に陥ってしまったまったくいかれたやつだと思うなら、あなたがCOVID前に信じていたこと、COVID後に信じるものを覚えておいて欲しい。あなたの精神構造を、2020年1月の状態に戻すことができるだろうか? インフレ調整済みの小さいけれど強力なポケット爆弾(金とビットコイン)を取り出して、あなたのブレトンウッズ体制は、最悪の持ち札と言わせてもらう。とにかく、とんでもなくふざけた事態なのだ。