この記事は、2018年2月16日に配信されたBitMEX仮想通貨トレーダーダイジェストの日本語訳です。
2017年は年間を通して、「BTFD(押し目買い)」が仮想通貨取引のメインテーマとなった。2018年は、最も意思の固い HODLer(保有派)にとっても試練の始まりとなるだろう。買いポジションを大量に組む最適な時期はいつだろうか。言うまでも無く、$15,000、$10,000、$8,000ではなかった。
どの方向で取引するにしても、周到な計算が必要となっている。収益性の高い戦略に忠実に従って得た利益も数日で消えてなくなる可能性がある。仮想通貨市場に積極的に関わるのなら、刻々と変わる状況に合わせて、戦略や思考方法も変えた方がよい。
金融メディアは、仮想通貨市場が急変する理由を常に必要とするため、信頼の置ける情報源を取材し、何らかの説明を追い求める。よく挙げられる理由をいくつか考察していきたい。
CME と CBOE の影響
CME ビットコイン先物契約の発売は、今回の買い相場のピークとなった。BitMEX ビットコインインデックス(.BXBT)は、あの運命の朝に $20,000 に達しようとしていた。その後 2 か月で、この水準がビットコインをショートする絶好のチャンスだったことが証明される。
現在、大手金融機関は米ドルの気配値を提示するだけでビットコインをショートできるため、市場ではこうした機関がその財力を使ってビットコインを売り叩くという憶測が流れていた(いる)。ただ、見落とされがちなのは、先物取引所では、ショートするにはロングする相手が必要であり、理論上、先物取引所には影響が及ばないという点だ。
空売りする側が買い手より低い価格を受け入れる場合、契約は額面未満で取引される。この場合、マーケットメイカーは買い越し、直物市場でビットコインを売るか、空売りする。取引残高がかなり大きければ、こうした逆ザヤによって相場は急落しかねない。
上記グラフは、2018年1月以降の XBTUSD 建玉残高であるが、比較的規模が小さく、この期間の最高は $1億6,400万にとどまっている。
すべてのマーケットメイカーが買い越ししていると仮定しよう。つまり、価格を中立に保つには、ビットコイン直物を空売りしなければならないわけだ。この場合は、$1億6,400万相当のビットコインを売却する必要がある。この数字は1日あたりのフローではなく、ビットコインのショートポジションの累計である。取引所の直物取引高は1日あたり $10億を超える。相対取引高は不明であるが、無視できない規模である。
CME と CBOE ポジション保有者からの理論的な最大売り圧力には意味がなく、実際のフローにおける広範な市場への影響は無視できる。これら契約は主としてトレーダーの強気センチメントに拍車をかけるものである。
取引高については、BitMEX の商品が引き続き両契約を圧倒している。年初以来、BitMEX の XBTUSD、XBTH18、XBTM18 の3 商品の合計取引高は $531.4 億ドルであったのに対し、CME と CBOE のビットコイン先物は合計で44.8 億ドルと、BitMEX が流動性で 12 倍超となっている。
ウォール街、ビットコイン直物をショート
老獪な銀行家たちは、一連の新参者が大儲けする状況に我慢ならず、直物市場で積極的にビットコインをショートして、相場引き下げを図った。
大手金融機関は、大量に(あるいはまったく)ビットコインを保有していない。ビットコインに関して、顧客の身元確認(KYC)やマネーロンダリング防止(AML)面の懸念で身動きが取れないためだ。そのため、ビットコインをショートしたければ、信用の置ける取引相手から借りる必要がある。「Cumberland Mining、$1 億ほどビットコインを貸してもらえるかい?」と言う具合に。
銀行がショートするためにビットコインを借りたとすると、取引所で売却する必要がある。ただ、世界中の取引相手が取引所に多額の注文を出すことに慎重である風潮から見て、一流銀行のコンプライアンス部門が口座開設を承認するとは思われない。
現実はともかく、取引デスクが大手ビットコイン直物取引所での口座開設を許可したとしよう。ビットコインの価格がゼロに下がったとすると、取引デスクの最大利益率は 100% となる。だが相場が 1 億ドルのポジションで 50% 逆方向に動いた場合、損失は巨額に上る。
取引を許可した責任者は解雇されるだろう。「ビットコインのショートで、巨額の損失」こんな見出しのニュースが出回り、担当者と銀行は笑い者にされることになる。
銀行は、こうしたビットコイン取引に伴うキャリアと運営上のリスクによって、この市場に手を出しにくくなるだろう。
韓国の取引禁止措置
仮想通貨を巡る政策に関して、中国に続き韓国に注目が寄せられた。韓国司法省高官が仮想通過取引の禁止を検討していると発言し、相場急落を招いた。
ただ、中国と違い、韓国ではしかるべき法手続きがある。また、韓国市場は自由化されている。事態が沈静化し、高官は取引情報の明確化(取引当事者、取引商品等)を望んだに過ぎないと説明した。今後、韓国で仮想通貨を取引する場合は、実名口座が必要であり、未成年者と外国人は取引できない。厳格な規制とも、禁止とも言えない。
事実、韓国政府は仮想通貨に興味を抱いており、国家年金基金は大手取引所の株式に投資している。韓国で最も有望な新進ハイテク企業「Kakao」は、取引高でトップの取引所「Upbit」を所有している。多数の有権者が支持し、高給の雇用を創出する業界を混乱させる規制を政府が課すとは考えにくい。平均的な韓国人は今後も仮想通貨を取引するだろう。
取引所は新規口座の受け入れを停止したが、この措置は2月に解除される。新規参入者が増えれば、マイナス地合いは解消されていくだろう。
中国が再び仮想通貨取引を禁止
中国政府からの不利な発表に、市場が反応する理由はなぜだろうか。規制当局は、全金融機関に自己評価の実施と仮想通貨取引関連の支払い禁止を指示した。この指示は、大手取引所での公開取引通貨取引停止を受けた大量の相対取引への対応措置であった。
こうした大量取引によって市場はより雑然としているが、中国投資家は何らかの方法で仮想通貨に投資することを望んでいる。中国人は、違法発電所さえ建設する方法を見つけている。政府の意向に反して仮想通貨を売買する術も間違いなく見つけるだろう。
Tether のビッグバン理論
多くの宗教では、神について論じるのは高位聖職者の役割とみなされている。仮想通貨界でも、私を含め仮想通貨「Tether(テザー)」の仕組みを理解するのは困難である。
米商品先物取引委員会(CFTC) は Bitfinex と Tether の市場操作等の疑惑に関して、召喚状を出したが、この出来事が市場にマイナスに影響するとは考えられない。
Tether が深刻な問題を抱えているのならば、内部調査の担当機関は、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)と米財務省となるはずだ。取引停止を望むのであれば、まず、停止(中止)命令を出すはずだ。召喚状を出したのが CFTC であり、Tether の発行が継続していることから、CFTC の狙いは Tether にとって致命的なものでない可能性が高い。
停止(中止)命令が発行された場合でも、大半の大型仮想通貨は、急落でなく急騰することになるだろう。利益実現を望むトレーダーが Tether を売り、他の仮想通貨を買うと予想されるためだ。
Bitcoin/Tether 価格の急騰に伴い、Bitcoin/USD 価格も上昇することになる。Bitfinex で銀行問題が勃発したときに、Bitfinex で USD IOU を売り、ビットコインを購入して引き出したのと同様のシナリオである。Bitfinex は相場を上昇させ、他の取引所も追随した。
Tether が実際に問題に直面していると考えるならば、ビットコインのロングをおすすめするが、市場の動きを見る限り、先頃の法的問題は深刻なものとは思われない。
根本的な変化
仮想通貨は全般的に急落しているが、前年比ベースでは、ビットコインは数百パーセント上昇している。保有通貨がそうでないとしても、投資とはそうしたものである。経済メディアに踊らされて、上値で買い、底値で売る事態は避けなければならない。
この資産クラスを巡る報道が減ると、弱気市場が長引く可能性がある。だが、仮想通貨に関しては、Nassim Nicholas Taleb 氏が「Financial Presstitute」と命名した金融プレスによる意図的情報操作が根付いており、業界にとって憂慮すべき状態となっている。金融プレスではこの分野の記事が最も人気を集め、仮想通貨がもてはやされている現状に引き続き関心が寄せられており、新規投資を掻き立てる要因となっている。
短期トレーダーについては、市場に投入される新しいフィアット通貨の量が当面の懸念材料である。修正局面が新規投資につながらない場合、小規模投資家がキャッシュ不足に陥るにつれ、信用取引主導の価格下落が進むだろう。ただ、仮想通貨トレーダーは、ボラティリティを好む。仮想通貨の取引を始めれば、株式市場が 5%「急落」したとしても、気にもかけないだろう。
長期「投資家」にとって、ビットコインをはじめとする仮想通貨の技術的メリットは今でも魅力的である。コインやトークンが役に立つかどうかや、相場変動は無関係だ。
唯一明確なのは、仮想通貨が細分化すれば、価格ボラティリティが高まるということである。仮想通貨トレーダーにとって、この第1四半期は面白くなりそうだ。
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