2018年平均回帰ファンディング

2018年4月20日の BitMEX Crypto Digest より 著者:Arthur Hayes BitMEX共同設立者及びCEO

強力かつシンプルな取引戦略の1つに平均回帰がある。XBTUSDスワップには、8時間ごとにロングとショートの間でやりとりされるファンディング率という特徴を持つ。この率は過去8時間に観察されたスポットインデックスに対するスワップのプレミアムまたはディスカウントに基づき算定されるが、観察、公表、支払いの各ファンディング段階にタイムラグがあるため、先行指標となり得る。

ファンディング率の趣旨は、トレーダーがトレンドの逆を行くポジションを組みやすくすることにある。市場が下落している場合、トレンドに乗っている投資家(ショート派)がファンディング率を支払い、市場が上昇している場合、トレンドに乗っている投資家(ロング派)がファンディング率を支払う。トレンドは続いている限り味方になる。トレーダーの経験上、ファンディングの絶対的増加は相場動向が転換する合図になり得る。

昨年9月、筆者は単純な平均回帰型ファンディング戦略を紹介した。ファンディング率が大きい正の値である場合、ファンディング手数料を請求される直前にXBTUSDをショートする。ファンディング手数料を受領したら、8時間後にショートポジションをカバーする。ファンディング率が大きい負の値である場合、ファンディング手数料を請求される直前にXBTUSDをロングする。ファンディング手数料を受領したら、8時間後にロングポジションをカバーする。この取引の実施時期を決める基準に応じて、過去プラスの利益が出ている。

1年強のデータ(2017年3月~2018年4月)を根拠として、この戦略の過去のリターンを計算した。この取引をきっかけに、正と負の側の平均から1および2つの標準偏差が起きている。以下がその結果である。

平均Bps 1.5346
標準偏差Bps 17.1951
シグマ ファンディング率 カウント パス率(%) 累計ファンディング 累計XBTUSDリターン 累計リターン 合計観察率(%)
-2 -32.8556 48 47.92% -17.75% -12.52% 5.23% 4,10%
-1 -15.6605 101 52.48% -21.99% -0.80% 21.19% 8,63%
1 18.7297 80 42.50% 20.46% 63.61% 84.07% 6,84%
2 35.9249 92 53.26% 34.46% -59.12% -24.66% 7,86%

シグマ – 平均からの乖離の標準偏差値。

カウント – 負のファンディングについて、この値はファンディング率がシグマ未満(ファンディング率は負)または超(ファンディング率は正)である観察件数。

パス率(%) – シグマが負の場合、次回ログの8時間リターンが正である観察件数の率。または、シグマが正の場合、次回ログの8時間リターンが負である観察件数の率。

累計ファンディング – カウント標本セットの観察からの合計受領ファンディング手数料。シグマが負の場合、XBTUSDをロングして、ファンディング手数料を受領する。これにより、累計ファンディングが負と表示されていても、この額を所得として受領する。

累計XBTUSDリターン – カウント標本セット観察の次回ログ8時間リターンの合計額。

累計リターン – この平均回帰戦略から得られる収益。XBTUSD取引からのファンディングによる純リターンに等しい。

合計観察率(%) – [カウント / 合計観察件数]

この単純化した考察で最も収益率の高いレンジは、1~2シグマ(絶対値)である。この結果は、ファンダメンタル的に理に叶っており、ファンディング率のピーク時に、トレンドに逆らう取引をしても、トレンドの継続に伴い手痛い目に遭う。ご存じのように、ビットコインは扇情的な市場であり、高値と安値の振り幅が大きい。

急騰や急落局面が長引きファンディング率が落ち着き始めたら、転換期となる可能性が大きい。その時点でトレンドの逆を行く注文を出せば、ファンディング手数料と相場変動利益の両方が得られる。

さらに高度な統計を駆使するトレーダーであれば、XBTUSDのファンディング率を軸に、より周到で精密な平均回帰戦略を構築できる。筆者が実施した分析用データはすべて当社の公開APIから無料で利用可能である。この考察は、冷静な分析型トレーダーにとって、ビットコインがなお投資妙味溢れる市場であるもう1つの証拠である。