浴衣でトレーディング

原文: Tradin’ In My Jammies

パジャマを着たバナナ (出典:オーストラリア放送協会)

3月3日火曜日 

都会的な旅館で寝間着に着替え、今にも寝こけようとしている。眠入ってしまう前に、私の担当バンカーに電話をして、投資適格インデックスCDS(クレジットデフォルトスワップ)取引の注文を試みなければならない。このインデックスは、仮想通貨とは違って、米国市場が開いているときにしか取引できない。だから、開場と同時に指値注文を入れようと待ち構えているやつのように、私も携帯電話を握りしめている。          

この旅館の雰囲気と浴衣のせいで、私は内省的になっている。2月上旬にグローバル・マクロ・インベスターの記事を読んで以来、IG CDSインデックスのプロテクションを買うことだけを考えてきた。その記事を目にした私は、CDS取引ができるかどうかを尋ねるべく、バンカーに電話をした。1時間の長い議論の末、ほぼすべての問題は解消した。いくつかの書類に物理的にサインをしなければならなかったのだが、これがたいへんだった。北半球の中では比較的冬を快適に過ごせる日本の山中に滞在していたからだ。先月、同指数は44bpsだった。今は70bps超で取引されており、コロナの恐怖が拡大して以来、私は、その取引がずたずたになるのを目の当たりにしてきた。

34水曜日                                                   

G7は終わったが、私が期待していたように事は運ばなかった。市場は落ち着き、中央銀行のさらなる刺激策を期待して、市場価格は上昇するかもしれないと思っていた。そして、IG指数のスプレッドは、私のビッド価格に達する前に縮小するかもしれないと考えていた。しかし、FRBは動揺して50bpsの緊急利下げを発表した。もはや市場ができることと言えば、かの有名なフランスの双子、ボグダノフ兄弟を縮み上がらせ、興奮させて、投げ売りを続けさせることだけだ。幸いなことに、私はCDSを約定することができた。     

この日、中央銀行は全能だという考えが、私の頭の中ではじけた。多くの市場コメンテーターが、私と同じ結論に達し、そのことを様々なブログやレポートで雄弁に語っている。しかし、あなたは実際に行動する前に、自分の中で確信を得る必要がある。これは現在の私の宗教観のようなものだ。  

いざ出陣だ。私は、USDCNH 24カ月8.00コールをいくらかと、HYG 2020年12月 65.00プットを購入した。私は、中国と米国の高利回り社債が、今後のデフレで最大の痛手を被ると考えた。また、エネルギーETFを売り、ウランと金の鉱業銘柄を買い増した。                                                       

私のポートフォリオで損失が発生している。しかし、皆さんにとって、私がどのようなトラディショナルアセットやエキゾチックデリバティブの取引を行なっているかは、どうでもいいことだろう。皆さんが知りたいのは、ランボルギーニが買えるほど大儲けできるのはいつか?価格が高騰するのはいつか?ということだ。私は、ここに、現在の自分の考えを示すために自らの状況を開示する。トレーダーのポートフォリオに何が含まれ、何が含まれていないのかを知ること以上に、そのトレーダーの真の性質を示すものはない。

312木曜日                                                 

私は今、蒸し暑いシンガポールでこの原稿を書いている。エネルギーセクターは、サウジアラビアとロシアの間の原油価格の戦いで揺れている。ヨーロッパは武漢のようになりそうだし、トランプは、米国はヨーロッパ大陸からのフライトを拒否すると発表したばかりだ。冗談のような話が現実になりつつある。       

あなたがトイレットペーパー、医療用マスク、手指消毒剤を探し求めている間に、恐れを知らない指導者たちが、いかに私たちのことを「守ってくれるのか」(たぶん?)ということについて話してみよう。また、中央銀行のお偉方が、世界的な双子の需要と供給の衝撃を前にして、いかいして景気を刺激してくれるのかということについて、話しを進めておこう。                                                                                                        

救済のための財政策                                                                

来週、FRBは再び会合を開く。彼らには、ほとんど弾が残されていない。金利がゼロになるまで、あと100bpsしか残されていないのだ。確かにマイナス金利にすることはできるが、他の様々な中央銀行で見られたように、それはあまり効果的な方法ではない。                                                       

こうした言説がFRBをすぐに興奮させてしまったので、彼らには、デュラン・デュランの言葉を借りて、来るべきものに対して「リラックスせよ」と言いたい。しかし、本当のところ、金融政策で同時的な需給ショックを緩和することができるかどうかは誰にも分からない。                        

最近は、不要不急の公共事業や移転支出のようなその他の財政措置を実施するのが、政治的には困難である。中央銀行には無敵の力があり、独立性が確保されていると考えられているため、一方的かつ迅速に進路を変更することができる。だからこそ、世界金融危機以来、各国の政策立案者たちは、経済を再起動させる際に、彼らを全面的に頼りにしてきたのだ。中世ヨーロッパでは、理髪師が外科医を兼ねているような時代もあったが、現在の中央銀行総裁たちもそれと変わりはない。双子の需給ショックが世界経済に影響を与えるならば、利下げが、経済的な出血に対してできることは何もない。いったん利下げが始まったら、金利はどこでもゼロに行きついてしまうだろう。        

こうした状況は、一定の安全避難先資産にとって、非常にプラスであることは明らかだ。金、政府債、そしておそらくビットコインは、流動性が高まることで、勢いを得るだろう。ビットコインの場合は、確実というよりも、疑問符付きである。個人的には、ビットコインは、流動性が増加することでうまくいくと信じているが、それは証明される必要がある。                                                                                        

実際にインフレが生じるのは、統治機関が財政政策を妄信した場合のみであり、しかもこの状況で重要な政府は、中国と米国だけである。                                                                

中国では、2020年のGDP目標を達成するために、中央政府は信用残高の伸びを封じ込める努力を放棄するだろう。中国政府は、銀行に対して、インフラの構築を担う国有企業や民間の不動産会社に対する融資を許可するだろう。これらのプロジェクトのほとんどは、無駄で非効率的なものであるが、数字は上昇し、雇用は確保されるだろう。         

外部要因として影響する可能性があるのは、お気に入りのインフレヘッジ政策に走ろうとする輩である。アパートの値段は、平均的な収入から見れば非常に高くなっており、食糧価格も右肩上がりである。富裕層は間違いなくビットコインについて知っている。仮想通貨に対して大規模な規制がかかる中で、安住の地を求める多くの人民元がOTC取引プラットフォームに流れ込むことを、私も期待している。中国人民銀行が、BTCCNYのオーダーブックを非公開としたため、投資家たちは、ビットコインを購入することで、インフレに対する脅威も政府への不信感も表明していないと、真顔で言外に主張することができる。数字が上がる限り、私には好都合だ。       

今、アメリカでは、トランプが政治生命を賭けて戦っている。彼は、ウイルスの深刻さを軽視した。しかし、労働者階級(現実を見ず、まずは何か目を引くものはないかとチェックする連中)は、今、大人気のプロバスケットボールの試合、NBAのテレビ放映が中止されているので、厳戒態勢にある。トランプは借金が大好きだから、S&P500指数を常に高値に保つために、何らかの財政的なバズーカ砲を発射するだろう。    

こういう状況を想像してみてほしい。共働きが一般的なアメリカ社会において、学校が閉鎖されたら何が起こるだろう?ぎりぎりの生活をしている人たちに、私立の保育園に通わせるだけの金銭的余裕があるだろうか?第一、保育園だって開くかどうかさえ分からない。ひとり親はどうするのか?そういう人たちはいったいこの事態にどう対処すればいいのか?たとえ親が自宅で働いているとしても、生産性の低下を想像してみてほしい。働きながら、退屈する子どもたちの面倒を見るのは並大抵のことではない。おそらく子どもたちを黙らせるために睡眠薬の購入が増えて、製薬会社は潤うだろう。

これは、公衆衛生上の懸念から特定のサービスが利用できなくなったために、社会が直面する問題の一例に過ぎない。結論は、消費者は支出しなくなり、それがアメリカ経済にとって最大の病いだということだ。9月11日の同時多発テロ発生直後、ブッシュ大統領が国民に買い物を続けるよう奨励したことを思い出していただきたい。      

税金は上がらないだろう…と期待している。したがって、これらのプログラムに資金を提供するために、中央銀行は、直接紙幣を印刷して、政府債務の返済に充てるだろう。ようこそ、現代通貨理論(MMT)へ。この経済理論は単純に、お金を印刷することはとにかく悪いことではなく、成長を生み出すと主張するものだ。これは、世界中の政府債務の直接的な貨幣化に対する学術的な裏付けとなるだろう。  

最後は決まってインフレ、そして借金棒引きの周年行事で幕引きだ。この借金棒引きの周年行事は、政府や中央銀行による失敗を認めるものであり、ゴールドなどのハードマネーを再び世界通貨の裏付けとしたり、新政権によって前政権の債務を取り消したりするなど、様々な形態がある。成長力と生産性が十分ではないため返済できない借金は、何か訳の分からないかたちで消滅する。これは今年起こることではなく、今後10年間で行われることだ。       

借金の棒引きは、イタリアで始まっている。住宅ローンの支払いが留保されている。これは、住宅の所有者にとっては素晴らしいことだが、誰かの借金は、別の誰かの資産でもある。             

ラッセル・ブッファリーノが「ウイルス…それはどうしようもない現実です。」 言ったように、確かに、どうしようもないのだ。私は医療の専門家ではない。私には、どんな影響が出るか分からない。物語だけが重要だ。そして、政府がドアを閉め、経済を封鎖するにつれて、需要と供給の衝撃に対して、否定的な感情が噴出することが問題である。その恐怖が、中央銀行の手腕に対する信頼のバブルを崩壊させる引き金となるだろう。          

ビットコインへの回帰                                                            

ビットコインは、マクロ経済のボラティリティが再び高まるにつれて、安全な避難所として機能するだろうか?ビットコインは、8,000ドル以下で取引されているにも拘わらず、2020年は、ほとんどのグローバル株式指数よりも良いパフォーマンスを示している。しかし、浮上するにはまず、下落する必要がある。              

人類が直面している恐怖と不確実性は、世界的なマージンコールを刺激するのに十分だ。ビットコインは逃げない。私たちは、再び$3,000を付けるとは思わないが、最悪の場合、おそらく6,000ドルから7,000ドルにはなるだろう。四半期以下の流動性しかない仮想通貨ヘッジファンドには、投げ売りの必要性が生じるだろう。彼らは、下落市場にコインを投げ捨てるだろう。これによって、価格はぎりぎりまで低下するだろう。  

私は、仮想通貨を保有する皆さんが、「安いコイン」が大好きだということは知っている。しかし、S&Pが2,000近辺でうろちょろしていても、本当に大がかりなポジションをとろうと思うだろうか?以下で見てみよう。  

中央銀行の印刷機が超高速モードに切り替わるにつれ、ビットコインは、再び$10,000を超え、年末までには$20,000に向けて快走するはずだ。各国中央銀行は、金利をゼロにまで引き下げ、際限のない量的緩和を発表するだろう。しかし、初めのうちは、2008年や2009年と同様、中央銀行が紙幣を印刷したり、ゴールドやビットコインなどのリスク資産が上昇するといった一見容易に見えることも、すぐには生じないだろう。  

大がかりな買いを入れるのは、先物のベーシスがフラットまたはマイナスになったときだ。それが、楽観主義が消滅したことを示す合図になるだろう。そうなれば、フリーマネーの大波に乗って、仮想通貨を購入し始めなければならない。まずは、あなたのお気に入りのビットコインを十分に手に入れ、その後、他のすべてのシットコインを手に入れる。「あの出来の悪いリップル」でさえ、上昇するかもしれない。  

ボラティリティ、万歳!ずっと元気でいてくれよ。