要旨: 以下の記事は、ゲストライターであるLeo Weeseによって書かれたものである。Leoは、文化、仕事、健康、経済、金融へのCOVID-19の潜在的かつ長期的な影響について説明している。彼によれば、香港やシンガポールのような一部の国では、ウイルスの根絶を目指す可能性があるが、その他の西側諸国では、医療システムが管理できる程度に疾病の蔓延を遅らせる可能性が高いと結論づけている。今日、私たちが目の当たりにしている変化は、予想以上に永続的なものになるかもしれない。
COVID-19を引き起こすウイルス、SARS-CoV-2(SARS-2)は、パンデミック水準にまで拡大している。この健康危機は、21世紀全般ではないとしても、2030年までの決定的な瞬間となる可能性が高い。今回の出来事は、わずか数週間という短い期間に、何百万人もの人々の行動を劇的に変えたが、近い将来の政治、社会、経済をも形作ることになるだろう。
社会がどのように変化するかを正確に推測するには時期尚早かもしれないが、2001年と2008年の経験からすると、長期的な影響は常に誇張されるとしても、変化の一般的な性質は、比較的早い段階で予測することができる。SARS-2は、新時代の幕を開けると同時に、勢いを失いつつあるテロとの戦いの行く末に蓋をし、すべてのバブルが急速に萎むことに対する脅威となるだろう。 以下に述べる見解は、主にあなたの(そして私の)娯楽のために書かれたものである。分かりやすくするために、わざと誇張されている。
旅行
- 2020年夏に旅行する人は、出発する際に健康証明書が必要となるだろう。到着時には、PCR検査が必須となり、到着後は検疫隔離が必要になる場合もあるだろう。こうした制限の多くは、長期間実施され、そのうちのいくつかは永続的なものとなるだろう。9月11日以降、空港の到着エリアと出発エリアを分離したように、「安全地域」から来た乗客と「その他」の地域から来た乗客が混在しないよう、引き続き注意を払うようになるだろう。
- 海外旅行は停止してしまった。キャセイパシフィック航空は、例年3月には、1日に10万人以上の乗客を輸送する。この数は583人にまで減少している。長距離の目的地として残っているのは4か所に過ぎず、それぞれ週に2回しか運行されていない。国際線は、世界中で60~90%減少している。SARS-2が奇跡的に突然消えたとしても、旅行が急速に持ち直すことはないだろう。渡航制限の解除は、渡航制限の開始ほど簡単なことではなく、立ち往生した観光客や隔離された旅行者、引き裂かれた家族のトラウマ的な経験から、人々は長い間、海外旅行を避けるようになるだろう。
- 航空会社がひとたび倒産すると、簡単に元の規模にまで成長することはできないだろう。格安航空会社は、搭乗率が低いまま、再び利益を上げることが何年もできない可能性がある。チケットは、これまでよりもずっと高価なものになるだろう。
- 企業は、すぐにオンライン会議に慣れ、わざわざ出張しなくてもいい場合がいかに多いかということを認識するようになるだろう。旅行費用が高騰し、予算が圧迫される中、オフィスは、社内の会議スタジオにより多く投資するようになり、出張にはあまりお金を使わなくなる可能性がある。
- まだキャンセルされていない2020年の国際会議は、キャンセルされるだろう。2021年半ばまでのイベントの開催は不透明だ。一部の国が、SARS-2を制圧したとしても、特に外国人を含む大規模なイベントの再開は躊躇されるだろう。
- ノマド文化は終わりを告げる。旅行は高価になり、気軽に国境を越えることができなくなる。特にヨーロッパや北米における今回の凄まじいアウトブレイクを考えれば、多くの国は、仕事と観光の区別が曖昧な裕福な観光客でさえ、受け入れることができないだろう。こうしたものに代わる若い起業家やフリーランサーを対象とした「スタートアップビザ」が登場するかもしれない。ただし、そうしたビザは高価で、柔軟性のないものとなるだろう。
生活と仕事
- 生活と仕事を分離することは困難になるだろう。ホームオフィスはより整備され、家の中の中心的な部分となるだろう。一部の人々は、個人所有の防音ビデオ会議スタジオから働くようにさえなるだろう。効率的なリモートワークの文化に適応できない企業は、衰退するだろう。
- 若者の間では、これまで、教育や仕事のためだけでなく、意識的に都市で家庭を持つ傾向が見られた。人口密度の高い地域の利便性は、ミニバン通勤の非人間的な郊外のライフスタイルよりも優れているように見えた。リモートワークがすぐに当たり前の状況となり、人口密度の高い状況が避けられるようになり、都市部のアパートよりも田舎の大きな家を好むようになるのだろうか? 一方で、より良い医療やインターネットアクセス、宅配に対する需要から、引き続き都市の利便性が注目される可能性もある。
- 香港では、2月から3月にかけて、人々が自宅に滞在していたため、自分のアパートで不足しているものに気づいた人もいるだろう。また、ついにDIYで家の改築に取り掛かった人もいた。将来的には、人々ははるかに慎重に、住居を家具などで整え、住居により多くのお金を費やすようになるだろう。
- 武漢からベルガモまで、人々は料理のスキルを向上させようと懸命だった。多くの人々が、より健康的に生活し、より良い食事をし、より充実した生活を送り、次に引っ越す際には、より広い、より良いキッチンが利用できることを条件にするだろう。これは、キッチン用品の製造や生鮮食品の提供に関わる企業にとっては吉報であり、ファーストフードや加工食品業界にとって凶報である。
健康
- 私たちは、アジアがすでに2003年に実施したように、医療と医療設備により多く投資し、病院や一般開業医のインフラの多くを再考することになるだろう。発熱特別外来が、高熱の患者を診察するようになるだろう。患者は可能な限り遠隔でスクリーニングされ、他の人から慎重に隔離されるだろう。
- 私たちは、SARS-2だけでなく、他の感染症の撲滅も目指すようになるだろう。皮肉にも何度も指摘されている通り、「インフルエンザ」は、まるである程度仕方がないことだと受け入れられているかのように、年間最大50万人もの死者を出している。私たちは、インフルエンザの拡大を大幅に縮小し、もはや先進国は、このウイルスを容認しなくなるだろう。
- 各人のバスルームが診療所になるだろう。体温計、血圧計、尿、便、血液、唾液などを診断する基本的な医療器具が、すべての家庭に備わるようになるだろう。スマートウォッチのデータと共に利用することで、私たちは、これまでよりはるかに早く健康上の問題を検出することができるようになるだろう。
South Korea has started using this upgrade to its “phone booth” style testing centres. The country is still mass testing to control the COVID19 outbreak. In last 24 hours 17,885 were in process of being tested. (Pic @YonhapNews ) pic.twitter.com/wxsiJfwyVB
— Laura Bicker (@BBCLBicker) April 2, 2020
- 医療的な監視があちこちで行われるようになるだろう。空港、オフィス、さらにはレストランに、サーモグラフィーカメラが設置されるだろう。市は、定期的に下水のサンプルを採取し、一般的疾病や危険な疾病を予防するための検査を行うことを決議するかもしれない。異常があれば、その地域の(武装した)CDC部隊がやってくるかもしれない。
- 隔離は、より合理化され、制度化されるだろう。空港と国境の近くに検疫隔離用の「ホテル」が配備され、すべての海外旅行は一種の賭けになるだろう。しかし、2020年に仮に改装された住宅やホテルの複合施設とは異なり、新たな施設は、安全で適切に整備されるだろう。
- 人々のパスポートには、アフリカを旅行する際に今でも一般的な黄色のWHOパスポートと同様の健康ページが含まれることになるだろう。このページには、各人の永続的な健康問題、ワクチン、予防接種の情報が含まれるだろう。パスポートまたは国民IDには、医療処方箋や既知の病状を当局が読み取ったり、更新したりできるようにする機能が追加されるかもしれない。搭乗拒否リストには、必須のワクチン接種を受けていない人も含まれるようになる。
- 私たちは、より慎重に、高齢者や弱者のための安全な場所を提供するだろう。高齢者の住宅を設計・改修し、感染症に対する耐性を高めるだろう。こうした人々の生活の質に対する懸念と、このような住宅の改善を天秤にかけるのは困難だろう。
娯楽と教育
- 私たちはしばらくの間、大規模なコンサート、フェスティバル、スポーツイベント、会議を見ることはないだろう。2019年の大規模な香港ポップフェスティバルは、政治不安のためにキャンセルされたが、2020年もまた、まだ封じ込められていない感染性SARS-2ウイルスのためにキャンセルされるだろう。国際フェスティバルがCovid以前の形で、再び行われることはないかもしれない。
- スポーツや競技に対する人気は依然として高いが、大勢の観客がいなくても機能するよう、ビジネスモデルを改めて見直す必要が生じるだろう。チームスポーツは最も大きな打撃を受け、エクストリームスポーツと共にオンラインゲームに対する人気は、かつてないほど高まるだろう。オリンピックのようなイベントは、オンラインでは継続されるだろうが、そうしたイベントは、今後はるかに少なくなるだろう。
- 物理的な授業がない状況では、大学は本当に高価な単なるビデオチュートリアルである。人々は教育、特に個人的な家庭教師に、引き続きお金を費やすだろう。エリート大学に対する需要は引き続き高いとみられるが、シンプルなオンラインブランドとして、競争ははるかに厳しくなり、劇的な値下げが必要となるだろう。
- ハリウッドは、この数年間、意味のないものになることに懸命に取り組んでおり、2020年に公開された映画は、すぐにストリーミングサイトに移行するだろう。映画館は死に体で、その商品を企業広告や政治的プロパガンダに変えることで、誠実さと創造的な才能を失ってきた腐敗産業は死に絶える。ストリーミングプラットフォームは、人気を得るために、よりオープンな競争へと移行し、世界中の視聴者がより容易に利用できるようにしなければならないだろう。
- 音楽、ビデオ、ゲーム、教育などの高品質のオンラインエンターテイメントは、非常に低コストで提供され、最低タダで取得することができる。これは、ウイルス自体と同じくらい経済に大きな影響を与えるだろう: 異常労働供給曲線。
ファッション
- マスクは役に立ち、引き続き利用されるだろう。マスクに対する恐れは遠のき、よりファッショナブルなものとして認識されるようになり、多くの場合、着用しないことの方が容認されなくなるだろう。
- ネクタイやドレスは、マスクとセットで販売されるようになり、防護服、「防護用タキシード」に加え、スポーツマスクやスマートカジュアルマスクが登場するだろう。
- マスクは、警察、航空機の乗組員、シェフやスーパーマーケットなどの企業や政府の制服に含まれることになるだろう。最終的には、傘乾燥機やソープディスペンサーがあるところには、手指消毒剤とマスクディスペンサーが登場するだろう。
The president of Slovakia, Zuzana Čaputová, looks stylish even in these times. Get inspired and sew yourself a bright, colourful mask to brighten your day, match your clothes and especially – to protect you. #facemask #coronavirus pic.twitter.com/ko9qRuYSv5
— Sumissura (@sumissura) March 30, 2020
典礼・儀式
- どのくらいの儀式が存続するのかをここで予測することは、最も困難である。SARS-1によって、アジアにおける共同箸などの儀式が変化し、お茶で皿を洗うなど、その他についても強化された。人々は、まだ握手したり、ハグしたり、頬にキスしたりするだろうか? 靴を履いたまま家に上がったりするだろうか? 香港の一部のレストランでは、客に手洗いを促すため、すでに入り口に手洗い場を設置し始めており、他のレストランでも、テーブルにプレキシガラスのセパレータを設置している。
- 「肘を突き合わせる挨拶」が常態化しないようにしよう。
お金、投資、経済
- 大幅なインフレは避けられないだろう。2008年の救済策は、主に信用拡大、すなわち会計上のトリックであり、基本的に増え続ける資産へと流入したが、2020年に予想されているものよりも規模の小さいものだった。この10年間、安く金を借りた人々は、そのお金を主に株式や不動産に投資していたのだが、今後は、食料、家賃、医療品、メンテナンスに投入するようになるだろう。私たちの生産高は以前よりも少ないが、これらの商品に対する投資は高まっている。ビットコインと金市場を見よ。
- 観光や娯楽のような資本集約的な産業は回復しないかもしれない。そうした資産は償却する必要がある。これは、数えきれないほどのレストラン、バー、会議場、テーマパーク、クラブホテル、クルーズ船にも当てはまる。レバレッジの高いこれらの投資は、長期間、痛みを伴うだろう。
- SARS-2はオフィス不動産市場にどのような影響を与えるだろうか? 企業がロックダウンに対して永久的な計画を立て、リモートワークに慣れるにつれ、主にビデオ会議に使用される小規模なコア オフィスのみを保有するようになる可能性がある。同僚と共に働く空間は、「レンタルスタジオ」市場へと移行することで生き残れるかもしれないが、人々が通勤できないために、インフラを自宅に整備した場合、そうした市場はどの程度の規模になるだろうか?
- SARS-2は、グローバリゼーションへの警告の一撃となった。タイトなジャストインタイムのサプライチェーンは、外出禁止令と国境封鎖の時代にあっては、非常に脆弱であることが証明された。市場が、予測不可能な「貿易戦争」に適応するにつれ、すでにある程度の混乱は見られるが、これから訪れようとするものは、はるかに劇的なものとなるだろう。経済的な統合が少ないということは、大規模な倉庫、垂直統合、納期の長期化、そして最も重要な変化として、価格の上昇を意味する。医療品、医療機器、食品、電子部品、機械部品などを始めとする多くの産業が、「国内生産」へと切り替わるだろう。
- 発展途上国は、こうした変化によって完全に疲弊し、飢餓、戦争、平均余命の縮小が生じるだろう。観光客の不足は、何らかの資格を持たない市民の収入が少なくなることを意味し、経済的統合の減少は、多くの工場の閉鎖につながるだろう。一方で、食料価格の高騰は、人々に最も大きな打撃を与えるだろう。
結論
これらの変化の多くは、すぐに生じるかもしれないし、あるものはゆっくりと生じるかもしれない。また、そのうちのいくつかは全く生じないかもしれない。このうち、いくつかの変化はすでに進行中であり、今後は、それが単に加速するだけだろう。これまでに採用された政策の多くは、決して緩和されることはないだろう。香港やシンガポールなど、いくつかの地域では、領土から完全にウイルスを根絶するために、懸命になるだろうし、それを維持するために厳しいルールを設定するだろう。ヨーロッパや米国などの国々は、医療システムが十分ゆとりをもって対応できる程度に、ウイルスがゆっくりと社会に蔓延していく方を好むだろう。いずれにせよ、現在見えているものはすべて、次第に永続的なものとなるだろう。
音楽が止まり、皆席につき、始まりの時を待っている。
Leo Weese