2019年10月のビットコインキャッシュのハッシュレートのボラティリティが拡大

原文:Bitcoin Cash’s October 2019 Hashrate Volatility Increase

要旨:最近、ビットコインキャッシュ・ネットワークにおけるハッシュレートのボラティリティが拡大していることについて考察します。こうした事態を引き起こす直接的な要因を示す証拠は見当たりませんでしたが、今回の変動に一見周期性らしきものが認められることから、市場操作の可能性がある点には注意が必要です。ビットコインキャッシュのハッシュレートのボラティリティの問題に対する簡単な解決策はないというのが当社の結論です。ただし、コインの利便性に対する悪影響はこれまでのところほとんど確認されていません。特定の原因がより明らかになるまでのこの問題に対する当面の最善策は、気長に構えることであり、可能な解決策を探ることです。

ビットコインキャッシュのハッシュレート概算(8時間移動平均)– PH/s(ペタハッシュ/秒)

(出典:BitMEX Research)
(注:ハッシュレートの表面的な動きによる視覚的な影響を最大化するために、8時間という期間が選択されました。ハッシュレートデータは、難易度とブロック・タイムスタンプを使用して算出。)

ビットコインキャッシュのハッシュレートのボラティリティに対する懸念

最近、一部では、ビットコインキャッシュのハッシュレートのボラティリティが明らかに異常な高水準を示していることに対して懸念の声が上がっており、ブロックタイムに予想以上のばらつきが生じています。上のグラフが示すように、ハッシュレートのボラティリティは、2019年10月初旬から拡大しているようです。ここで重要なのは、ハッシュレートがブロックタイムに基づいて算出されているという点を考慮することです。いずれにしてもランダムで激しい動きを示していることから、ハッシュレートの短期的な変動がランダムなものであるか、実際の変化が原因で生じたものかを判断するのは困難です。しかし、私たちが見たところ、データにはかなりの説得力があります。これだけ変動しているということは、一定期間、支払いに対するネットワークの信頼性がわずかに低下した可能性があります。ただし、当社は、それは大きな問題ではないと見ています。

2019年10月におけるビットコインキャッシュの難易度、ブロック・タイムスタンプおよび当社のノードがビットコインキャッシュ・ブロックを受信した時間に関して、基本的な分析を行いました。

下のチャートが示すように、確かにビットコインキャッシュは、ビットコインに比べ、タイムギャップのボラティリティが大きいように見えます。

ブロック間のタイムインターバル– 50ブロック移動平均(分)– 201910

(出典:BitMEX  Research)
(注:ハッシュレートの表面的な動きによる視覚的な影響を最大化するために、8時間という期間が選択されました。ハッシュレートデータは、難易度とブロック・タイムスタンプを使用して算出。)

ビットコインキャッシュのブロック間のタイムギャップは、ピークが高く、底が深いため、ビットコインに比べて、変動が激しいばかりではなく、あまりランダムではなく、より規則的なピークと底があるように見えます。データには何らかの形の周期性があり、市場操作の可能性が考えられますが、直接的な証拠は見つかりませんでした。データがランダムなものであれば、チャートが周期的に見えたとしても、それは錯覚である可能性があります。ビットコインキャッシュの難易度は、ブロックごとに調整されるため、調整アルゴリズムがこのような周期性を引き起こすことはないという点に留意する必要があります。また、ピークと底のサイズを最大化するために、50ブロックという期間が選択されたことにも注意してください。これによってグラフ上では、問題がわずかに誇張されている可能性があります。

決定的ではないものの、因果関係の証拠を探索

次の表では、ブロックごとに難易度を計算することにより、各マイニングプールの各ブロックの平均難易度を分析しました。同業他社よりも低い平均難易度を達成することを目的とした戦略を採ったマイニングプールが、成功したかどうかを見極めようとしたものです。この分析は確定的なものではなく、不明なマイナーは、全体の平均にかなり近い平均難易度を達成したことが分かります。ただし、データをさらに詳細に分析すれば、より興味深いことが判明する可能性があります。

ビットコインキャッシュ– 201910月マイニングプール統計

 
マイニングプール
 
 
マイニングされたブロックの数
 
 
マイニング・シェア
 
各ブロックがマイニングされた場合の平均難易度
 
タイムスタンプと当社のローカルクロックの平均タイムギャップ(分)
 
不明
 
2,260
 
58.5%
 
346,505,954,955
 
0.48
 
BTC.TOP
 
394
 
10.2%
 
338,181,028,080
 
0.37
 
BTC.COM
 
374
 
9.7%
 
356,552,266,136
 
0.35
 
Bitcoin.com
 
266
 
6.9%
 
351,755,694,757
 
0.68
 
ViaBTC
 
234
 
6.1%
 
354,652,554,749
 
0.40
 
Antpool
 
210
 
5.4%
 
355,272,725,567
 
0.38
 
Huobi
 
118
 
3.1%
 
344,651,571,915
 
1.00
 
 
DPOOL
 
6
 
0.2%
 
360,262,982,821
 
0.31
 
合計
 
3,862
 
100.0%
 
347,926,146,858
 
0.48

 

(出典:BitMEX Research)

また、ブロックのタイムスタンプと、当社のローカルシステムクロックがブロックを受信したことを示す時間とのタイムギャップを分析し、市場操作の証拠を求めて、プール間の不一致を再度探索しました。おそらく、昨日の記事で言及した8.3%という潜在的脆弱性を利用するというものです。 やはり、そのような直接的な証拠は見つかりませんでした。不明なプールのタイムスタンプはちょうど平均値を示し、当社のシステムクロックの0.48分前でした。

以下のチャートは、当社のローカルクロックと比較した場合のタイムスタンプ・ギャップを引き続き確認し、ビットコインとビットコインキャッシュを比較して、異常を視覚的に識別しようとしたものです。これらを観察して分かることは、押し並べて、ビットコインのタイムスタンプの方が、ローカルクロックと一致しており、タイムギャップはそれほど変動していないということです。これは、タイムスタンプに対する悪意のある操作によるものではなく、ビットコインがビットコインキャッシュよりも強力なピア・ツー・ピア・ネットワークを持っており、ブロックの伝播が速いことを示唆しているに過ぎないとも考えられます。

ビットコインキャッシュ – タイムスタンプとローカル・ノード・クロックとの平均タイムギャップ(分)– 2019年10月–(ビットコインと比較するため、Y軸はカット)

(出典:BitMEX Research)

(注:オレンジ色の線は50ブロックの移動平均です)

ビットコイン-タイムスタンプとローカル・ノード・クロック間の平均タイムギャップ(分)-2019年10月

出典:BitMEX Research)

(注:オレンジ色の線は、50ブロックの移動平均です。x軸は2019年10月です。)

タイムスタンプの操作やその他悪意のあるマイニング戦略の証拠を見つけることはできませんでした。ビットコインキャッシュは、数少ないハッシュレート・コインであるため、数の少なさによってハッシュレートがある程度不安定になる可能性はあります。おそらく、周期的に見えるのは、最も収益性の高いコインをマイニングするために設計された自動化システムにおけるラグか、その他の悪意のないの要因によるものでしょう。

結論

ビットコインキャッシュのハッシュレートのボラティリティに関する潜在的な問題を修正するには、ハードフォークが必要になる可能性があります。同コインに関しては、数日後に、ハードフォークのアップグレードが既に予定されていますが、これには上記の問題の修正は含まれていません。いかなる修正にも、かなりの開発作業と分析や議論が必要となる可能性があります。このため、当面、修正が行なわれる可能性は低いと考えられます。ただし、この問題の緊急性は低いと考えられます。

ビットコインキャッシュが、問題の修正をいかに検討するかということについて、以下の事項を提案します。

  1. マイニングの併合2017年11月に説明したように、ビットコインとマイニングを併合することができれば、ビットコインキャッシュのマイニングは安定する可能性があります 。そうなれば、この問題は時間とともに消滅していくでしょう。
  2. ビットコインの2週間の調整期間を採用する–ビットコインキャッシュは、ビットコインの予め定められた2週間のウィンドウ難易度調整システムに回帰する可能性があります。おそらくこれは、より単純な解決策の1つですが、これによって問題を完全に解決することはできません。
  3. ブロックタイムの短縮–ビットコインキャッシュは、1MBブロックサイズ制限を再度有効にし、ブロックタイムを約1分に短縮することができます。ブロックタイム・ギャップが小さいため