WebSocketのレート・リミットの問題につきまして(2019年6月25日)

原文: WebSocket Rate Limiting Issue, 25 June 2019

6月25日 21:09:00UTC(日本時間 26日06:09:00)、当社はAPIレイヤーのアップデートをリリースしましたが、本来ならば免除されるはずの特定のテーブルに対するレート・リミットのWebsocketサブスクリプションが誤ってカウントされ始めました。このアップデートは、WebSocket APIを頻繁に利用するお客様に影響を与えた可能性があります。6月26日00:19UTC (日本時間 同日09:19)に問題が特定された時点で、すぐにアップデートをロールバックしてシステムは正常に戻されました。

ご不便をおかけして申し訳ありません。どのサブスクリプションがリクエスト・レート・リミッターから免除されるかについての詳細は、以前のブログ記事ご参照ください。

重要なセキュリティアドバイスについての更新(2019年6月)

原文:Important Security Advisory Update, June 2019

概要:顧客アカウントへの不正アクセスの試みが増えています。次の方法で、お客様のBitMEXアカウントおよび個人アカウントを保護してください:すべてのアカウントに対して2要素認証(2FA)を有効にし、そしてパスワードマネージャを使用してください。

セキュリティは、常にBitMEXの最優先事項です。だからこそ私たちは、顧客の資金を守るために、手動で複数の署名を持つコールド・ウォレットの設定を採用した最初のプラットフォームとなりました。私たちは常にセキュリティプロトコルを見直し、当社の基準を改善しています。当社はプラットフォームのセキュリティとお客様のセキュリティを継続的に改善しています。

2016年に、大規模なボットネットのセキュリティ情報再利用の攻撃を受けて、BitMEXで固有のパスワードを使用することの重要性を強調したブログ記事を公開しました。さらに、 「二段階認証」 または 「多要素認証」 と呼ばれる2FAを有効にすることを推奨しました。この2FAは、ログイン時のユーザー名とパスワードだけでなく、一意の時間ベースのトークンの入力も要求することで、アカウントにセキュリティ層を追加します。トークンは、Google AuthenticatorやAuthyなどのソフトウェアベースの認証アプリ内で携帯電話に保存できます。

アカウントを保護するには、強力な固有のパスワードを常に使用し、多要素認証およびパスワードマネージャと組み合わせて、常に強力で一意のパスワードを使用する必要があります。

最近では、顧客アカウントへの不正アクセスやその試みが増加しています。アカウントで2FAを有効にすることは、これらの攻撃から自分自身を保護するための最良かつ最も簡単な方法です。

さらに、我々は、経済的動機に基づく犯罪者が利用する洗練された手法及び戦術の継続的な増加を確認しています。その一例として、攻撃者が即座に引き出し要求を実行するのではなく、攻撃者が同じように制御している別のアカウントに対して故意に損失を与えることによって、口座から資金を引き出すことを観察しました。これらの攻撃の多くは事前に特定されており、この活動が検出されたときは排除し続けます。

アカウントの乗っ取りの際に繰り返し使用されている手法の一つは、アカウントへの不正ログインによって送信されるはずのBitMEXのメールログイン通知を無効にすることです。攻撃者は、引き出し許可を持つAPIキーを作成するために、侵害された顧客アカウントで二段階認証を有効にしようとする可能性もあります。ほとんどすべてのケースで共通しているのは、顧客が引き出し通知またはログイン通知などその他のアカウント関連のEメール通知を見ていない可能性があるということです。

我々は二要素認証やその他のログインアクセス機能の強制使用などの方法を確認しながら、次の変更を行いました。

  1. 設定によりログイン通知メールの送付が無効にできなくなりました。既存の通知設定にかかわらず、アカウントへのログインがあった場合にはメール通知が行われます。
  2. APIを介して作成された引き出し要求は、使用されたAPIキーが2019年6月10日午後8:00(UTC)より前に作成されたものでない限り、引き出しを確認する電子メールでの検証ステップを完了する必要があります。

これらの変更は、お客様のアカウント・セキュリティを向上させるためのステップですが、これが完全なソリューションではないことを認識することも重要です。二要素認証を有効にすることが最も推奨されます。

上記に加えて、BitMEXは我々の顧客が経験した全てのアカウント乗っ取りをレビューし、侵害されたアカウントに共通するいくつかの要因を特定しました。

  1. パスワードの再利用、またはBitMEXプラットフォームおよび顧客の個人的なメールアカウントから簡単に推測が可能なパスワードの使用
  2. 個人のメールアカウントが侵害され、パスワードのリセットを通じたアカウントの盗難
  3. お客様のコンピュータへのマルウェアの侵入、パスワードの盗難を経たBitMEXプラットフォームへのログイン

これらの攻撃に対抗するためには、警戒を保ち、セキュリティに対する規律あるアプローチを採用することが重要です。上記のすべてのシナリオでは、二要素認証を使用することでアカウントが侵害されるリスクが大幅に減少します。このことは、二要素認証にセキュリティ・キーが使用された場合、攻撃の100%がブロックできることを示した、Googleによる最近の調査でさらに強調されています。

我々はお客様に二段階認証を強制的に適用することを検討していますが、次のような優れたセキュリティ・プラクティスを採用することの重要性を改めて強調します。

これらの手順は、BitMEXアカウントだけでなく、機密情報を保存する個人アカウントでも実行する必要があります。

  1. 2要素認証を有効にする
    1. Google Authenticator Authy など、利用可能な多くの選択肢の1つを利用することをお勧めします 。
  2. 強固で一意のパスワードを使用し、 LastPass などのパスワードマネージャを利用する
    1. 強力なパスワードは、文字、数字、記号(@、#、$、%など)の組み合わせである10文字以上(および文字数が多いほど強力なパスワード)で構成されます。パスワードは通常大文字と小文字が区別されるため、強力なパスワードには大文字と小文字の両方の文字が含まれます。
    2. Facebook、Spotify、Instagram などのソーシャルメディアアカウントには、BitMEX取引アカウントや銀行アカウントと同じパスワードを使用しないでください。強固で一意の、アカウントごとに異なるパスワードをご使用してください。
  3. 既存のリスクを評価する
    1. HIBP のようなサービスを利用し、お客様のパスワードが第三者による侵害で漏洩したかどうかを確認してください 。
    2. お客様の残高がいくつであるかを確認するために定期的にアカウントをチェックしてください。
    3. アカウントの定期的な勘定調整(reconciliation)は、すべての取引がお客様によるものであることを保証する有用な方法でしょう。
  4. お客様の連絡先リストにsupport@bitmex.comを追加し、BitMEX からのメールが迷惑メールフォルダに届いていないことを確認する
    1. bitmex.comからの公式のメールをフィルタリングしていないことを確認してください。これらの連絡には、ログインおよび出金通知が含まれます。
  5. BitMEXサポートはお客様のアカウントのパスワードを要求しません

BitMEXでは、セキュリティを非常に重視しています。我々は、社内外でセキュリティ機能を進化させ続けていますが、セキュリティは最終的には個人の責任でもあります。オンラインアカウントにデジタル資金がある場合は、上記のようにアカウントの安全性/セキュリティを確保するための対策を講じることが重要です。

アカウントに異常が見られた場合は、すぐに BitMEX のサポートページにご連絡ください。

BitMEX テクノロジー・スケーリング パート2:100倍への道

原文:BitMEX Technology Scaling, Part 2: The Road to 100x  ALEX NIMMO

この連載のパート1では、BitMEXの起源についてお話しました。

今日は、この連載のパート2をお届けします。オーバーロードと水平方向のスケーリングに関する問題について深く掘り下げます。前代未聞のボリュームを処理するためのこれまでの取り組みの結果について議論し、BitMEXエンジンの各パーツ、すなわち、直列でなければならない部分、並列化できる部分、そしてBitMEXのAPIファーストの利点について詳しく説明します。

パート3では、すでに導入されているコードの最適化、並列化されたシステム、そして、特定の機能が除去された理由について説明します。さらに、公正で平等なアクセスを確保するためのBitMEXの取り組みについてお話します。そしてそれが、当社がコロケーションの提供を拒否していることと、どのようにつながるのかということについてもお話します。

では、始めましょう。

成長

BitMEXは、仮想通貨の分野におけるユニークなプラットフォームです。業界最高レベルのレバレッジと機能を提供するために、BitMEXの取引エンジンは、仮想通貨業界や従来の金融業界における他の多くのエンジンと根本的に異なります。また、非常に正確な取引とマージニングを提供することはできますが、それは、まだ、それほど速くはありません。

2017年のBitMEXの1日あたり平均取引量は、129倍に増加しました。これは驚くべき成長であり、2018年および2019年も成長を続けました。

2016-2018年の1週間あたりの取り扱い注文数

2018-2019年の1週間あたりの取り扱い注文数
このチャートは、1つ前のチャートの最後のピークから始まっていることに注意してください。

ご覧のとおり、1週間あたりの注文数も2017年から急増しています。特に興味深いのは、2018年7月は、注文数が比較的少ないにもかかわらず、USD取引で過去最高の80億ドルを記録したことです。この記録は、110億ドルの取引が行われた先週の2019年5月11日まで破られることはありませんでした。これらの記録は、1取引所において取引された1日あたりの仮想通貨取引額としては、依然として過去最高額であり、XBTUSD 永久スワップは、これまでで最も取引された仮想通貨商品です。この商品はこれまで、新規参入業者、既存業者を問わず、様々な仮想通貨取引所によって何十回も模倣されてきました。

2018年5月、当社は、取引エンジンでの注文のキャンセル、修正、および発注行動を最適化し、kdb +が提供できるような速度に合わせるために、内部データ構造やアルゴリズム、さらには監査チェックの改良に注力し始めました。既存のトレーディングエンジンが、現在行っていることをはるかに速いスピードで続けられるよう、当社はこの作業にたいへん注力しました。この努力により、非常に短期間でパフォーマンスを10倍以上に向上させたことをたいへん誇りに思います。パフォーマンスは、最初の30日間で4.6倍に、8月末までには10倍に向上しました。パフォーマンスが向上したことで、取引エンジンにおけるほぼすべてのオーバーロードが7月中旬までには解消されました。この驚くべき結果を達成したテクノロジチームをたいへん誇りに思います。

下記は、すべての書き込みリクエスト(注文の発注、修正、キャンセル)のオーバーロードをパーセンテージで示したもの。
赤いほど、オーバーロードが強いことを示します。

2018年5月5日

2018年7月16日

市場は当社のこの能力拡大に反応し、BitMEXの取引量は急増しました。当社の1日あたりのビットコイン取引量は、仮想通貨業界初の100万XBT取引の水準に達しました。この能力増大により、当社は、業界初のETHUSDクワント永久スワップのような革新的な新商品の発売を継続することができたのです。このETHUSD 商品は、上場から6週間で、業界一取引量の多い商品となりました。2018年11月、1日の取引量は200万ビットコイン近くに達し、2019年5月には110億ドルに達したのです。

7月のグラフでは、完全にオーバーロードが解消されているように見えますが、このレポートを読んでいるあなたなら、そのままの状態が続いたわけではないことをご存じでしょう。なぜ完全に修正されていないのでしょうか? なぜ100倍以上に達するよう、我々は努力を続けなかったのでしょか?

いくつかの背景をご説明しましょう。

順番待ち

BitMEX上のリクエストに対するサービスは、チケットカウンターに並んで順番を待つのと似ています。あなたは列(キュー)に並び、列が解消されたら、自分のリクエストを行います。

チケットを購入するのにどのくらい時間がかかりますか? まあ、列をなしていなければ、非常に速く済ませることができるでしょう。インタラクションは、少なくとも個々のリクエストに対応している間は続きます。トラフィックとボリュームが非常に少ないほかのトレーディングサービスでもイライラが生じるのは、このためです。たとえリクエストのキューがそれほど長くなくても、最大能力が低い場合は、そうなります。

キューが非常に長い場合はどうなるか考えてみましょう。あなたのリクエストが処理される間だけでなく、あなたの前にいるすべての人の処理が終わるまで待たなければなりません。たとえ世界一やり手のスタッフがいたとしても、順番待ちの列ができ始めたら、普通は非常に不満を感じるものです。

単純で非常に素早く処理されるリクエストもありますが、複雑で時間のかかるリクエストもあります。リクエストそのものを回避することができる場合(たとえば、ユーザーの利用可能残高が、リクエストを完了するのに必要な額に達していない場合)、自動チェックインカウンターやバッグドロップのような最適化システムを使って、そういう人たちが順番待ちの列に入らないようにすることもできます。

Webサービス上のトラフィックも同様です。 たとえ個々の要求は非常に素早く処理できたとしても、たったひとつのリソースのために列ができれば、顧客満足度は低下します。

これと同じような話を以前聞いたことがあるでしょう。AmazonとAlibabaは、休日に大きなシステムダウンを起こしたことがありました。ツイッターには、この失敗を批判する声が上がりました。BitMEXを含む多くのプラットフォームもまた、たまに運悪く順番待ちの列を発生させしまうことがあります。

オーバーロード

ご存知かもしれませんが、「システムオーバーロード」は、この問題に対処するためにBitMEXが採用しているメカニズムのひとつです。信じられませんか?  いったいどうすれば、オーバーロードが「問題」ではなく、逆に「解決策」になるというのでしょう? オーバーロードは、業界ではむしろ「負荷制限(ロードシェディング)」として知られる情報システムにおいて利用される防御のための仕組みです。システムがクラッシュして、一切のリクエストが処理できなくなる状態になるのを避けるため、いくつかのリクエストを無視することにより、システムのオーバーロードを回避するのです。

当社は、負荷制限に関する明確な規則とそのメカニズムを説明するための文書を公開しました。

未処理のリクエストの列がいっぱいでないときに注文を出す

未処理のリクエストの列がいっぱいであるときに注文を出す(オーバーロード)

これを理解するために、負荷制限を持たないシステムを考えてみましょう。需要の増加に伴い、順番待ちの列ができ、その列が長くなり始めます。

最悪の場合、どうなるでしょうか?  市場が動いているとき、トレーダーの巨大な群れは、ポジションを増やしたり減らしたりするために、競って発注します。遅延はそのうち解消されると思うかもしれません。すなわち、サービスの質が低下するにつれて、トレーダーは発注ペースを落とし始め、ひとつずつ処理が終わるのを確認してから、次の注文を出すようになると思うかもしれません。しかし、実際には逆のことが起こります。応答時間が長くなると、自動裁定取引者は、迅速に市場に参加して、他の取引所と同等の流通価格を維持するということができなくなります。また経験豊富なトレーダーは、価格差を把握し、手動でより有利な取引を行おうとしますが、こうした行動がさらにキューを長くしてしまいます。

何らかの予防策がなければ、キューは何分もの遅れにつながる可能性があります。ユーザーが、待機中の注文を効果的に発注できなくなるにつれ、オーダーブックのスプレッドは拡大します。注文が実際にキューを通過し、執行されるまでの間に、素晴らしい市場価格が、ひどい価格に変わってしまいます。このような状況では、取引は事実上不可能です。これは単なる仮説ではありません。他の仮想通貨市場も直面している共通の課題なのです。

これに対するBitMEXの解決策は、取引エンジンのキューに入れる注文管理リクエストの最大数を制限することです。取引エンジンの前には、リクエストを、読み取り(すなわち、GET / api / v1 / positionなどのデータを取りに行くこと)と書き込み(たとえば、注文の発注/修正/キャンセルおよびレバレッジの変更など)を識別するサービスがあります。書き込みの場合は、メインエンジンに委譲され、キューができることになります。このキューが長くなり過ぎた場合、キューに参加させて待たせるのではなく、すぐに注文を拒否するようにしました。このキューの長さは、最悪の場合でも3~5秒のレイテンシー(待ち時間)になるよう、エンジンのパフォーマンスに合わせて調整されます。

負荷制限に関する当社の文書によれば、キャンセルのような特定の種類のリクエストは、そのサイズに関わりなくキューに入ることができますが、他のリクエストと同様、列の最後尾に並ぶことになります。

このようにすれば、トレーダーは、注文がキューの最後尾に並んだ後に、執行に時間がかかるということを知るのではなく、システムの遅れを即座に把握することができます。このため、エンジンが減速することはありません。実際、オーバーロード中は、エンジンが最大注文数に達すると、オーダーブックとトレードフィードは非常に速く動きます。

オーバーロード中の取引

トレーダーの中には、取引がオーバーロード中も続くということに不満を抱く人もいます。実際、私たちはこのことに関して、ツイッターやトレーダーのチャットルームで、多くの陰謀論を目にしてきました。基本的に、これらは真実ではありません。BitMEXのすべてのトレーダーは、平等にアクセス権を有し、同じキューの最後尾に並びます。取引エンジンはいつでも、キューに並んでいる人のリクエストから可能な限り速く処理していきます。

システムに入力する注文の数が、システムが処理できる数の5倍に達したら、注文の20%のみが受け入れられ、80%が拒否されます。どの注文が拒否され、どの注文が受け入れられるかに関しては、単に注文が到着した時点でキューに空きがあるかどうかで決まります。あなたのリクエストが、別の注文に対するレスポンスが行われた直後にシステムに到着した場合、キューが最大限度数を下回るため、あなたのリクエストは受け入れられることになります。あなたの直後に提示された注文は、受け付けられないかもしれません。

取引のピーク時には、BitMEXの注文入力は、通常の2030倍に膨れあがります! 1分あたりの執行取引が1億ドル以上に達したこともあります。もしこの状態が続けば、取引量は1時間あたり60億ドル、1日あたり1440億ドルを超えることになります。これは、BitMEXや他の仮想通貨プラットフォームで1日に記録された最高取引量の13倍に相当します。

画像上部:合計リクエスト数 紫= API、青=フロントエンド。

画像下部:10秒ごとに拒否された注文比率(パーセンテージ)。この事例は、異常に高い比率を示しており、オーバーロードが最悪であったことを示しています。実際には、1日のうちにBitMEXに送信されたすべての注文のうち、負荷制限によって拒否されるのは2~3%に過ぎません。

急激に市場が動いたため、上図では、注文数が大幅に増加しています。

常にスムーズな取引を提供するには、BitMEXは、取引の集中するこうした事態にも対応できるよう、大きく余裕のある容量を確保する必要があります。 以下に、この目標を達成する過程で直面したいくつかの課題を説明します。

高いスケーリング能力とアムダールの法則

スケーリング問題はどうすれば解決できるでしょうか? スケーリングには「垂直方向」と「水平方向」の2種類があります。垂直方向のスケーリングは、個々のシステムの速度を上げることを意味します。これを実現するには、より高速なプロセッサを購入するか(幸運なことに、CPUに関してムーアの法則は適用されなくなっています)、作業量を減らす方法を見つける必要があります。一方、水平方向のスケーリングは、「お金で解決する」類いの問題です。より多くのサーバーを稼働させ、それらのサーバー間で負荷を分散させます。

Webサーバーは、水平方向にスケーリングが可能なサービスのよい例です。 適切に設計された、たいていのシステムでは、顧客の需要を処理するために、Webサーバーの数を増やすことができます。ある応答が別の応答に依存しない限り、食料品店のチェックアウト係のように、複数のサーバーを並行して作動させても問題ありません。

これは非常に単純化された例ですが、多くの場合、スケーラビリティ・ソリューションは、もっと徹底した「お金で解決する類いの問題」です。多くのシステムは水平方向に拡張します。ほとんどの顧客のエクスペリエンスは互いに完全に独立しており、Webサーバーを増やせば簡単に処理できます。 バッキングデータベースは、多くの場合、データを相互に複製しながら水平方向に拡張できます。

水平方向のスケーリングには限界があり、よくアムダールの法則として表現されます。 つまり、システムの水平方向のスケーリング能力は、直列なオペレーションが求められる場合(すなわち、特定の順序で実行されなければならないオペレーション)によって限定されます。たとえば、複数のサーバーを介して、並行して実行することにより、スピードアップしたい、単純でシングルスレッドなサービスを想像してみてください。パフォーマンス分析の結果、作業の25%は、順番に行われなければならないものだということが分かったとします。この場合、残りは並行して行うことができます。これは、あなたがお金をかけて、いくら多くのコアまたはサーバーを用意したとしても、その数に関係なく、1/25%= 4であるため、4倍のスピードアップしかできないことを意味します。このちょっとした直列な作業がボトルネックになります。

出典:https://learnyousomeerlang.com

この直列要件は、BitMEXがほかの多くの一般的なWebサービスと大きく異なる点です。 BitMEXの取引エンジンは、はるかに多くの直列要件を持っているため、並列化の可能性は著しく制限されます。

シーケンシャル問題:注文とリマージニング

BitMEXの取引エンジンは、先入れ先出し法(FIFO)で注文を処理しています。人気の高いインターネットプロバイダーに電話をしてもなかなかつながらず、保留にされるように、取引エンジンへのコールも、受信された順に処理されます。

これは市場の基本原則であり、変更することはできません。オーダーブックは、注文を順番に受け付ける必要があります。つまり、注文すること自体が問題なのです。アグレッシブな注文が行われると、それによって流動性が奪われ、他の注文は流動性を享受できなくなります。このため、個々のマーケットでは、マッチングを効果的に行うことができなくなります。ただし、マッチングは、マーケットごとに1つのプロセスにデリゲート(委譲)される場合があります。

BitMEXは本稿執筆時点において、エンジンの前で、プロキシと直接通信するAPIサーバーを約150台稼働させています。このプロキシは、データミラーへのリクエストの読み取り、pub / Subシステムへのウェブソケットデータの読み取り、エンジンへの直接的なリクエストの書き込みをデリゲートします。

ご想像のとおり、書き込みは、システムの中で最もお金のかかる部分であり、スケーリングが最も困難な部分でもあります。取引システムが効果的に機能するためには、次の条件が必要になります。

  • すべての参加者が、同時に同一のマーケットデータを受け取らなければならない。
  • 参加者は誰でもいつでも書き込みを送信できる。
    • 書き込みが有効なうちに、パブリックステートを変更する場合は、その書き込みが承認され、執行された後に、変更されたワールドステート(世界の状態)は、すべての参加者に送信されなければならない。

このシステムは最適化されていないため、二次スケーリングを行います。すなわち、100人のユーザーが1分間に1つの注文を送信すると、10,000(100 × 100)マーケットデータパケットが各参加者に1つ生成されます。ユーザー数が10倍の1,000人になれば、100倍のマーケットデータ(1000 × 1000)が生成される、といった具合です。

この記事の冒頭で述べたように、BitMEXは2017年に129倍に成長しました。その間、当社のユーザー数もそれに比例して拡大しました。 これは、2017年12月31日には、2017年1月1日時点に比べ、約16,641倍(129 × 129)のメッセージが送信されたことを意味します。

システムの一貫性

BitMEXをスケーリングするのは難しい作業です。私たちは、従来のスポット取引やデリバティブ取引のプラットフォームではありません。サインアップから入金、取引までの顧客のライフサイクル全体を処理します。

100倍のレバレッジを安全に提供するためには、BitMEXのシステムが正しく、高速に作動しなければなりません。BitMEXは公正価格マーキングを使用しています。これは、オリジナルなシステムですが、しばしば模倣されることもあります。このシステムは、その金融商品の直近の取引価格ではなく、元になる原資産のスポット価格の総合指数を使用して、ユーザーのマージンを再決定するものです。これにより、BitMEX市場は、外部の流動性を参照して操作することがはるかに困難になります。

これが正しく作動するためには、BitMEXエンジンに一貫性がなければなりません。 マーク価格が変わるたびに、システムは、すべてのユーザーのオープンポジションのマージンを再計算します。このとき、システム全体が、制御ルーチンによって監査されます。すべてのオープンポジション、すべてのオープンオーダー、すべての残余マージンのコストは、入金合計額と正確に一致していなければなりません。1サトシでも不明金が出れば、システムはシャットダウンします。こうしたことが、初めの頃は何度か起こりました。これは、アフィリエイトの収入や手数料における四捨五入などで、そのサトシに多少の誤差が生じるためです。エラーが発生するたびに、わずかな資金を補填するという誘惑はありましたが、当社チームは、システムの支払能力が最も重要であると考えています。すなわち、可能な限り高度なスタンダードを採用する必要があるのです。システムは、状況が大きく変化するたびに、今日も正確なサトシ額合計を監査しています。

悪意のある者が、BitMEX上のデータベースにアクセスして、自分の残高を編集するというのは不可能です。システムは、お金がどこからも出ていないことを即座に認識し、致命的なエラーを発生させ、シャットオフするでしょう。

監査する前に、あなたのアカウント全体の現在価値、すなわち、すべてのオープンポジションとオープンオーダーの、新しい価格に基づく価値を、一から再計算する必要があります。これによりトレーダーは、自分のアカウントに十分な資金がない場合は、全く買うことができなくなります。トレーダーのBitMEXの残高がマイナスになることはありません。

このシステムをスピードアップすることが、当社がスケーリングに注力する目的のひとつです。 マッチングは比較的時間がかからず、簡単にスケーリングできます。マージニングの場合はそうはいきません。BitMEXは、常に「早いうちに速く修正する」よう努めてきました。したがって、この作業にかかった時間の多くは、主に正確性を期すためのものでした。不正確な結果は許容できないので、正しく分散されたシステムが、プロデューサーの遅延や失敗を検出し、負荷を再調整し、重要な処理を限られた時間内に完了できなければなりません。これには、慎重で体系的な注意と厳密なテストが必要です。

当社のエンジニアは、最適化を安全に行うことができるいくつかの重要分野を特定し、プラットフォームの容量を劇的に増加させるための新しい堅牢なアーキテクチャを提供できるよう、絶え間ない努力を続けています。

APIファーストデザイン(API第一主義に基づく設計)

BitMEXは他社とはかなり異なります。APIファーストを採用しているからです。 BitMEXのアーキテクチャは、取引エンジン、API、Webフロントエンドの3つの主要部分で構成されています。フロントエンドという用語に、「the」という冠詞は付けませんでした。なぜでしょう?

BitMEXを構築するとき、私たちは最高級のAPIを望みました。優れたAPIにより、開発者は堅牢なツールを簡単に構築できます。想像もしなかったような視覚化やインターフェースさえも可能にします。私たちがコーディングを始めた頃、仮想通貨取引のAPIの性能は使い物にならないレベルだったと言っても過言ではありません。その多くは、規則も、文書も、事前に作成されたアダプタも備えていませんでした。重要なデータがないことも多く、重要な機能はWebサイト上でしか実行できませんでした。さらに悪いことに、多くの場合、ウェブソケットフィードを備えておらず、非公開にしてWebサイト経由でのみアクセス可能なものも少なくありませんでした。

BitMEXは、この傾向を覆し、仮想通貨取引におけるAPIに新たなスタンダードを導入しました。いかなるプログラムでも利用できるよう、ウェブサイトはAPIを使用しなければならないと規定することにより、敢えて「ドッグフーディング」方針を採用しました。これは「the」フロントエンド(すなわち、そこでしか通用しないような独自のフロントエンド)がないことを意味します。当社にあるのは、単に一般的な公式のBitMEXフロントエンドに過ぎません。プロジェクトとしてのBitMEX ウェブサイトには、API開発者のEARといくつかのログインや登録不正使用防止メカニズム以外に特別なアクセスはありません。

これはまた、BitMEXにアクセスするためのメカニズムが、他のメカニズムより速くも遅くもないことを意味します。モバイルデバイス、ブラウザ、オーダーメイドのAPIコネクタ、あるいは「Sierra ChartのDTCインテグレーション」のどこから入っても、すべてのユーザーは、同じデータパスと同じキューに入ります。こうして、すべての人は公平に扱われます。

BitMEXは、最初から以下のものを備えていました。

  • 注文、取引、オーダーブック、ポジション、マージン、金融商品などを含むすべてのテーブルのウェブソケット変更フィード。ここでは、すべてのテーブルは同一のフォーマットに従います。
  • Swagger(スワッガー)仕様(現在OpenAPIと呼ばれる)を通じて人とマシン両方が使用可能な完全に文書化されたオープンAPI
  • GitHub上の複数のサンプルプロジェクト
  • WebサイトとAPIコンシューマの両方に対する統一されたデータパス。

リアルタイムデータ

APIファーストデザインへのBitMEXのコミットメントは、リアルタイムデータの実装において異彩を放っており、このことは当社のウェブソケットを見れば分かります。上で述べたように、すべてのテーブルにはリアルタイムのフィードがあります。これは仮想通貨業界では初めてのことで、今でも非常にまれな状況です。さらに、すべてのテーブルは同じフォーマットに従っており、わずか30行のコードを書くだけで、いかなるストリームも処理できます。あるいは、当社のGitHubから入手して利用することもできます。

このデータは、エンジン自体によって生成されたチェンジストリームから流れ、個々のユーザーのサブスクリプションによってフィルタリングされます。これにより、テーブルのサブスクライブ、リクエストの作成、変更のためのストリーム上での待機など、BitMEX上でのインターフェースの構築において、非常に快適なフローが可能となります。一般に、HTTPリクエストに対するレスポンスは、エラーでない限り無視できます。これにより、アプリケーションにおいてありがちな二重性を回避することができます。すなわち、これまでのアプリケーションでは、ウェブソケットストリームとHTTPレスポンスの両方を別々に読み取って合体しなければならないため、おかしなコードとバグが発生していましたが、これを回避することができるのです。

私たちは、トップレベルのアプリケーションインターフェースを構築するという当社のこの理念が、ユーザーランドの最高の統合を実現するだけでなく、BitMEXウェブサイトと今後のモバイルアプリを最高のものにすると信じています。

当社のリアルタイムフィードは、BitMEXプラットフォームが正常に機能するために必要な、最も重要な部分です。私たちはこの目的に向かって、システムの大幅な内部修正を行っています。これにより、外部を変更せずに、レイテンシー(待ち時間)とスループット(処理速度)を大幅に改善することができると期待しています。当社はまもなく、このシステムのローンチとその結果を発表する予定です。

次のステップ

上記により、当社が将来100倍に成長することを見据えて、プラットフォームをスケーリングする際に直面する課題について、すべての方々に十分に説明することができていれば幸いです。私たちはプラットフォームの成功を誇りに思っており、ユーザーに感謝しています。ただし、今後も発展していくためには、改善し続ける必要があります。

BitMEXトレーディング・エンジン・チームは、プラットフォームの更新を週に数回リリースします。これらの段階的な変更は、トレーディング・プラットフォームの継続的で長期的なリアーキテクチャであると同時に、エンジンに対する戦術的なインプレース能力の向上でもあります。これらの努力、成功、失敗については、このシリーズのパート3でご説明します。

当社のエンジンチームは、システムのスループットの大幅な改善を定期的に行ってきました。まさに最近、2019年5月23日に、同チームは、インフラストラクチャにおける大規模なアップグレードを行い、新規注文の処理能力を最大70%向上させました。今後数カ月間にわたり、こうした容量の大幅な改善を実施し続けると同時に、プラットフォームのより大規模なリアーキテクチャを並行して行って参ります。

新規注文の中央値、平均値、および99パーセンタイルの処理時間。アップグレードされたコードは、01:20(世界標準時)頃に開始されました。

95パーセンタイルの注文キャンセル処理時間(APIを通じて利用可能な3種類のキャンセル操作の場合)

当社は、トレーディングエンジンのスケーリングを急速に進めていますが、チームのスケーリングも行っています。BitMEXは、電子商取引システム、スケーリング、インフラストラクチャ、セキュリティ、そしてWebの分野で、世界的に有名な専門家を雇用しています。あなたがこの記事に興味を持ったとすれば、あなたが、当社の欲する人材であることの証かもしれません。当社の採用ページにはワクワクするようなチャンスが記載されていますので、ぜひご覧ください。

更新:2019年3月29日のシステム一時停止に関するお知らせ

3月29日の12:00 UTC(日本時間21:00)に、BitMEXは一部機能が約15秒間停止しました。この間、決済処理中にエンジンがブロックされたため、すべてのリクエストは負荷制限となりました。 15秒の停止後、プラットフォームは正常に戻りました。

20:13 UTC(日本時間 翌日05:13)に、BitMEXウェブサイトにて少数のユーザ様は一部サービス中断となりました。この問題はすぐに特定され、修正されております。 またAPIは影響を受けておりません。
ご不便をおかけして申し訳ありません。質問がある場合は、カスタマーサポートまでご連絡ください。

2019年2月8日に発生したAPIタイムアウトについてのお知らせ

本日UTC 05:40から07:11の間(日本時間 同日14:40から16:11の間)に、BitMEX REST APIへのリクエストのサブセットが、APIレイヤーでのリソース同士が競合をしたためにAPIの応答が遅くなり、最終的にAPIタイムアウトとなる事態が発生しました。社内のアラートメカニズムを介して検出したのち、数分以内に原因を特定し、即時の影響を軽減しました。現在進行中の問題はなく、この間、取引エンジンやユーザーデータに影響はありませんでした。

問題の根本的な原因に対する修正は特定されており、優先事項として取り組んでいます。これらが利用可能状態になった際は、別のアナウンスメントでお知らせ致します。また、潜在的な類似の問題をより早く検出して解決するために、システム監視を強めております。この度はご不便をおかけし申し訳ございません。

MarketWithLeftoverAsLimit注文タイプの廃止

APIおよび取引システムアーキテクチャの継続的な簡略化の一環として、2019年2月8日(金)UTC 04:00(日本時間 同日13:00)以降、以下の注文タイプはサポートされなくなります。

• MarketWithLettoverAsLimit

上記時刻後にMarketWithLeftoverAsLimitの注文タイプの値で送信された注文は却下されます。さらに、この注文タイプの未処理の注文は、上記の期限後すぐに自動的にキャンセルされます。そのため、これらの注文タイプを使用している取引戦略は、今回の変更を反映するように適切に更新されていることを確認してください。

Websocket API 内部アップグレードのお知らせ

BitMEXプラットフォームの性能改善の一貫として、2019年1月16日 16:00 UTC(日本時間翌日01:00)にWebsocket API インフラのアップデートが予定されております。

この変更による取引エンジンのダウンタイムはございませんが、16:00 UTC(日本時間翌日01:00)にwebsocketフィード上に公開されているDELTAに瞬断が起こると想定されます。この瞬断のすぐ後、すべてのwebsocketクライアントが、再接続時に誤った注文、ポジション、オープンオーダーブックを参照しないように、すべてのwebsocketの接続は強制的に切断されます。その他の点においては、利用者様は今回の変更を特別意識をする必要はございません。

進捗状況のご報告:先週の問題の根本原因の修正をしました

先週の記事でお伝えした問題の対応策として、システム内部のマーケットデータ配布コンポーネントの再購読ロジックの改善を昨日実施しました。この対応により、先週の問題の根本原因に対処すると同時に、この対応時に追加でデプロイされた取引エンジンへの影響を抑える安全メカニズムにより、今後は問題が再発しないと考えております。

ビットコインの一般への普及は、既存の金融システムを根本から変革するか?

2019年1月3日 BitMEXリサーチより 原文はこちらです。

 

抜粋

本コラムでは、銀行の貸付方法、および経済における信用水準を銀行が拡大する能力に貸付方法がどう影響するかを巡るありがちな誤解について考察する。こうした誤解が事実であることを確認するため、マネー固有の特質を分析する。次に、ビットコインが特異な特徴の組み合わせをいくつか持つ理由を従来の貨幣形態と比較して、検討する。具体的には、電子的に取引可能であること、第三者の金融仲介者が不要であるため、銀行預金を必要とせず、信用サイクルを加速することが挙げられる。そのうえで、こうした特徴が銀行の信用拡大能力に及ぼしうる影響について説明する。

 

このレポートのPDF版(英語)をダウンロードするには、こちらをクリック

 

信用拡大のダイナミクス

伝統的な銀行システムおよび近代経済の主な特徴は、大規模な預金受入機関(銀行)が経済における信用(債務)水準を、準備金で埋め合わせる必要なしに拡大できるという点にある。

金融に関して誤解されがちなのは、新規融資を行うために、銀行は準備金、流動性、または「現金」を必要とするという考えである。結局、銀行はどこから資金を得ているのだろう。小規模の銀行や一部の金融機関が新規融資を行うには財源を見つける必要があるのは事実であるが、一般的に、各国の大手銀行にとっては事実といえない。

主要銀行が顧客に新規融資をする場合、ある意味、それにより新規の預金が自動的に創出されるため、財源を捻出する必要はない。なぜなら、その顧客、あるいは顧客がローンで購入したアイテムの販売者は、その資金を銀行に預金し直すためである。したがって、銀行が資金を必要とすることは一切ない。実際、人々が他にできることはない。預金は銀行システム内部に「捕らわれて」いるのだ。実物の紙幣や硬貨を引き出す場合は例外だが、昨今そうする人は稀だ。

次の簡略化した例で考えてみたい。

  1. 大手銀行のJPモルガンがある顧客に住宅ローンを提供する。顧客は初めての自宅を50万ドルで購入しようとしている
  2. JPモルガンは住宅ローンを組む顧客に50万ドルの小切手を切る
  3. 顧客はその小切手をJPモルガンに預けている自分の預金口座に入金する
  4. 顧客は新たに50万ドルの小切手を切り、物件の売り手に手渡す
  5. 売り手もJPモルガンの顧客であり、小切手の受領直後に、JPモルガンの自分の銀行口座に小切手を入金する

国を代表する銀行で組まれた新規住宅ローンの図説

 

ご覧のとおり、上記行程は銀行の流動性や準備金に何らの影響も及ぼしていない。また、この例のいかなる段階においても「現金」を支払う必要は生じていない。言うまでもなく、物件の売り手が住宅ローンの提供銀行と同じ銀行に口座を必ず保持しなければならないわけではない。ただ、JPモルガン、HSBC、バンクオブアメリカなどの大手銀行は、国内市場の預金受入事業で大きな市場シェアを持つため、こうした大手銀行は、新規ローンの相当部分以上が自行に最終的に預金されるものと通常期待する。実際、経済内の新規ローンによって、こうした大手銀行が使用可能な流動性は減少するより増えるのが通例である。

銀行はこのローンを次のとおり会計処理する。

  • 借方:貸付金(資産):$500,000
  • 貸方:預金(負債):$500,000

銀行の資産と負債の両方が増える結果、貸借対照表は拡大する。一方、この取引の住宅の売り手は、50万ドルの現金を手にする。上記トランザクションにより経済内のローンと預金の額は増加している。住宅ローンを組んだ顧客にとって、この預金は「現金」ととらえられる。ある意味、資産(この例では不動産)と関係ない、何もないところから新しい資金が創出されている。上記シナリオでは、経済で流通する実物紙幣と硬貨の総価値を表すM0(ベースマネー)、および中央銀行に預金されている資金は変動していない。MOと銀行口座預金で構成されるM1は、50万ドル増加している(ただし、M1の定義は地域によって異なる)。

銀行の観点からは、現金準備金は実物紙幣と硬貨、および中央銀行に預けている資金である。銀行が保有できる預金水準と準備金水準との割合は「準備率」と呼ばれる。準備率を管理するこの規制形態は、準備金額より多い額を預金顧客から借りている「部分準備銀行制度」につながる。ところが、一般通念とは逆に、大半の主要西側諸国では、こうしたローンを組む銀行の能力を現金準備金との関係で直接制限する規制はない。必須準備率は、設定されていないか、低すぎて重大なインパクトを及ぼさないケースがほとんどである。ただし、「自己資本比率」と呼ばれる、拡大プロセスを制限する規制制度は存在する。自己資本比率とは、銀行の資本と総資産(厳密には加重計算後の資産)との比率である。したがって銀行が新規ローン(新規資産)と新規預金(負債)を創出するのは、十分な資本がある場合のみである。資本は銀行への資本投資と累積留保利益で構成される。例えば、資本が10ドルの銀行は、自己資本比率の制限が10%の場合、100ドルの資産のみ保有できる。

 

信用サイクル

上述のダイナミクスでは、銀行は経済で新規ローンを提供し、信用水準を拡大して、ほぼ意のままにインフレを引き起こすことがある程度可能である。この信用サイクルは、現代経済の主な原動力であり、金融規制の主因であると考えられることが多い。信用サイクルがビジネスサイクルにどの程度影響するかは、エコノミストの間で活発に議論されているが、こうしたダイナミクは拡大的信用バブルや経済破綻の原因によく挙げられる。あるいは、サトシ・ナカモトは次のように 説明している

我々の資金を保有し電子的に移転するために銀行は信用に値する存在でなければならないが、信用バブルの波に乗って我々の資金を貸しまくり、そのほんの一部を準備金としていたにすぎない。

 大手投資会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は、信用サイクルが少なくとも短期的に経済成長に拍車をかける主因であるという主張の擁護者のようである(以下のビデオでの説明を参照)。

 

 

部分準備銀行制度を原因とする信用サイクルは、ブームと破綻サイクルも含めて現代経済の主要原動力であるという節は、ビットコインコミュニティでよく支持される可能性が高い。この節は、「オーストリア学派」のビジネスサイクル理論と呼ばれることもあるが、この学派以外の多数のエコノミストも信用サイクルの重要性を高く評価している。

 

信用拡大ダイナミクスの根本的原因

上述の信用拡大ダイナミクスと部分準備銀行制度は、理解されにくい理論であるが、インターネットの登場に伴い、極左派、極右派、または陰謀説支持派はこのダイナミクスに不完全な形であれ 部分的に気付き始めている。「銀行は何もないところから資金を創出する」や「部分準備銀行制度」という説明には、ある程度説得力があるためだ。そこで「なぜ金融制度はこのように機能するのか?」という疑問が浮かぶ。この疑問の根本的答えは、よく理解されていないと弊社は考えている。

政治・経済に関してこうした非主流的見解を持つ人々は、経済を確実に支配しようとする強力なエリート銀行家による大規模な陰謀と考えるかもしれない。例えば、ロスチャイルド一族、JPモルガン、ゴールドマンサックス、ビルダーバーググループ、連邦準備銀行、その他の強力な秘密団体が金融システムを故意にこうした構造に作り上げ、悪辣なほど不正な利便や影響を得ようとしたのではなかろうか。実際には、そのような事実はまったくない。

銀行が準備金を必要とせずに信用を拡大できるのは、我々が使用する資金の本質的特徴と根本的性質の結果である。消費者や企業が、銀行に対するローンと考えることができる場合に、心理的かつきわめて実務上の論理的理由で、銀行預金を「現金」同様に扱うためである。消費者や企業はローンを現金と考え、引き出すことはないため、銀行は、現金が安全であると認識しながら、預金量を拡大することができる。

銀行預金は完全に合理的で論理的な理由でこのように扱われている。実際、銀行預金には物理的現金と比べて大きな利点がいくつかある。単純に銀行預金は実物の現金より優れているのである。部分準備銀行制度の原因は、一部が考えるような悪辣な陰謀でなく、こうした本質的かつ実質的な利点にある。

 

実物紙幣および硬貨と比較した銀行預金の利点

要素 銀行預金 現金
安全性

金融機関の預金に資金を保持することで安全性が高まる

資金は複数の先端セキュリティメカニズムで保護され、盗難に備えて保険がかけられる

自宅に多額の現金を保有すると盗難や損傷リスクにさらされる

現金は保険の対象外であり、保管コストは高額となり得る

電子送金 銀行システムの使用により世界中でインターネットや電話を使って低コストですばやく資金を効果的に送金可能 実物の現金での送金は、時間がかかり、非効率で安全性が低い
利便性 資金管理のための銀行システムの利用は、便利なツールとなり得る。例えば、形態電話やパソコンを使って資金を使用できる

正確な金額を送信できるため、釣り銭にまつわる問題は生じない

現金の取り扱いには困難と手間を伴うことが多い。正確な金額を特定できず、釣り銭の計算が必要な場合がある
監査可能性 伝統的銀行は不正防止に役立つ全トランザクションの追跡、管理、監視機能を備え、レポート作成や説明責任の点で優れている 現金を使用した有効な記録保持は自動化が進んでおらず、不正が発生しやすい

 

各種マネーの主な特徴

電子的に使用可能など、 本稿のパート1で触れた銀行預金の強力な利点に反し、実物の紙幣や硬貨は電子マネーと比べて大きな利点がある。次の表は、各種マネー、銀行預金、実物紙幣、電子キャッシュ(ビットコイン)の主な特徴をまとめたものである。

 

電子銀行預金、実物紙幣・硬貨、電子キャッシュの特徴

特徴 銀行預金 現金 電子キャッシュ
物理的現金の利点
銀行の支払不能時やアクセス不能時に、資金は完全に保護される*
当局者が資金を没収するのは困難
当局者から資金を効果的に隠蔽可能
トランザクションを簡単に遮断不能
匿名性の高い送金が可能
取消不能の送金が可能
送金は即時に実行可能 ? ?
支払いは常時実行可能 ?
トランザクション手数料はゼロ ?
停電時や通信ネットワーク不通時に支払い手続き可能
バイスを購入や所有せずに資金を使用可能
許可なく、誰でもシステムを使用可能
電子システムの利点
インターネットから支払可能
釣り銭の計算は不要
支払いを簡単に記録可能
資金を簡単に保護し、盗難防止可能 ?

 

注:* 物理的現金には、通貨発行体である中銀政策に関連する支払不能については潜在的問題あり

 

上記表で挙げている強みにより、物理的現金には常に特殊なユースケースがある。ただし、銀行預金は大半の利用者にとって、全般的に物理的現金より優れている。銀行預金の電子的使用能力は、デジタル時代において特に魅力がある。本稿のパート1で説明したとおり、銀行預金に対する高い需要を常に確保できるのは、銀行が信用水準を事由に拡大できることも合わせて、資金を電子的に使用するこの能力によるものである。

 

ビットコイン固有の特質

ビットコインは電子的銀行預金と比較した物理的現金の強みの多くを共有する。ただし、ビットコインは上記表のすべての利点を持ち合わしていない。とはいえ、ビットコインの重要な固有の特徴は、物理的現金のいくつかの利点と電子的な使用能力を兼ね備えている点である。

ビットコインは、物理的現金のいくつかの特質を再現することを目的にしつつ、電子形態をとる「電子キャッシュシステム」である。ビットコインが登場するまでは、物理的現金と銀行預金の2つの選択肢しかなかった。

物理的現金は中央銀行の預金であるため厳密には銀行預金の一部であるが、なお所持人払いという特殊な性質を持つ。この性質は電子形態で過去再現できなかったものだ。2009年、史上初めて、ビットコインは電子形態の所持人払いで使用可能なタイプの資産となった。以下のシンプルな表には、ビットコインとブロックチェーンベーストークンの主な特徴がまとめられている。

 

旧式金融システムの二者択一とビットコインが提供する新しいオプション

所持人的性質の手段 電子的性質の手段
物理的現金(紙幣・硬貨)
電子マネー(銀行預金)
電子キャッシュ(ビットコイン)

 

したがって、ビットコインはハイブリッド形式の新たなマネーと考えることができる。物理的現金の利点をいくつか持ちながら、銀行預金の利点も一部持ち合わせている。

 

ビットコインの限界

ビットコインは旧式電子マネーシステムと物理的現金の強みをいくつか承継している。電子マネーと物理的現金のどちらかの利点全部を持つわけではないが、それぞれの詳細な特徴を兼ね備えるという独特な立場にある。これにより、新たな中道的オプションが生まれている。

例えば、従来の電子決済システムの処理能力や電気なしに使用できる能力(物理的現金など)をビットコインが持つことは決してないかもしれないが、技術の進歩に伴い、徐々に利点を強化し、その能力を向上して、格差を縮小する可能性がある。

 

ビットコインの特徴が信用拡大に及ぼす影響

上述の特徴のダイナミクスを理解することは、エコシステムが拡大したときに、ビットコインが秘める経済的重要性を評価するうえで有益となり得る。ビットコインは、信用拡大に対して本質的にある程度の耐性を提供する性質を少なくとも6つ備えている。これは、従来型マネーは持ち合わせていないものである。銀行預金に資金を保持できるという利点は、他の利点と比べてビットコインで常に明言されているわけではないためである。ただし、ビットコインも旧式システムに存在するものと同じ信用拡大力の影響を当然受ける。実際に、人々は物理的現金同様、金融機関の預金にビットコインを保持することができる。単に、同じ信用拡大力への耐性が高いということにすぎない。

弊社の根拠付けの中核にあるのは、物理的現金と比較した銀行預金の利点、すなわち大手銀行が自由に信用を拡大できるという点を考察し、ビットコインにどの程度この利点が当てはまるかを評価することにある。以下の表で示すとおり、銀行預金に資金を保管する利点は、ビットコインの世界ではそれほど重要でない。したがって、信用拡大に特殊な耐性を実際に持つと弊社は考える。

 

ビットコインおよびビットコイン預金と物理的現金および銀行預金との比較

要素 銀行預金と比較しての現金 ビットコイン預金と比較してのビットコイン
1.安全性 金融機関の預金に資金を保持することは、自宅に多額の物理的現金を保持することと比較して安全である。現金は盗難や損傷にさらされやすい ビットコインは銀行預金への資金の入金が不要であり、高レベルの安全性を実現可能

例えば、ビットコインは隠蔽や暗号化が可能である

2.電子送金 銀行システムの使用により世界中でインターネットや電話を使って低コストで資金を効果的に送金可能

実物の現金での送金は、時間がかかり、非効率で安全性が低い

ビットコインは金融機関の預金を使用せずに、インターネットで効率的に送金可能
3.利便性 資金管理のための銀行システムの利用は、便利なツールとなり得る。例えば、形態電話やパソコンを使って資金を使用できる

正確な金額を送信できるため、釣り銭にまつわる問題は生じない

ビットコインは、携帯電話で支払い可能で、釣り銭額の手計算も不要。金融機関の預金は不要
4.預金の換金能力 伝統的な銀行システムでは、金融機関から物理的現金を引き出すには時間のかかる長い書類手続きが必要。そのため銀行は、多額の物理的現金を準備金として保管しておく心配は不要 ビットコインを使用すると、銀行からすばやく資金を引き出すことが可能なため、銀行は常時十分なビットコインを準備金に確保するようになる可能性がある
5.監査可能性 銀行は不正防止と説明責任強化に役立つ全トランザクションの追跡、監視機能を備える。

物理的現金にはこうした機能はない

ビットコインのブロックチェーンなどの電子データベースは、第三者の金融中間業者を使わずに、トランザクションを効果的に監査、監視可能
6.「ハイブリッドバンキング」 伝統的な銀行業モデルは、基本的に次の2つの選択肢のみ:

1.利用者が資金を完全に管理可能な物理的現金

2.金融機関に預金される資金

これは中間的選択肢のない二者択一式モデルであり、妥協用選択肢がないため、消費者に難しい選択を強いる

ビットコインではより広範囲の預金とセキュリティモデルがあるため、信用拡大ダイナミクスは複雑化する

例示:

1. 2段階方式のマルチシグネチャウォレット。銀行が一方のキーを、利用者がもう一方のキーを保有。

2. 一方選択型のマルチシグネチャウォレット。銀行が一方のキーを、利用者がもう一方のキーを保有。

 

信用拡大抑制による経済的影響

本稿の分析が示唆する低レベルの信用拡大の影響からは、この新しい経済モデルが社会にとってより有益となるかどうかや、ビットコインが成功するかどうかについての答えはさほど得られない。前者の論点は長年エコノミストが激しく議論してきたものであるが、後者の論点については、別の議題であると弊社は考える。長年、エコノミストの議論の的となってきたものの、ビットコインはこれまでのマネーと明らかに異なるため、新たなまったく異なる情報で再び議論することが必要であろう。例えば、信用拡大サイクルを原因とするインフレやデフレは、ビットコインベースの金融システムでは、銀行預金や債務に基づく金融システムへの影響と比べて、非常に異なる影響を及ぼす可能性がある。債務ベースの金融システムにおけるデフレの主な問題点は、債務の実質価値を増大させ、景気下降スパイラルを導く点にある。ビットコインをはじめとする非債務ベースの金融システムのデフレの影響はそれほど明らかでない。

ビットコインがより優れた経済モデルにつながるとは必ずしも限らないが、この分析は、ビットコインが今までに登場したモデルと比べて、この経済モデルを多少なりとも独特なものとし、恐らく興味深くするいくつかの特質を備えていることを提示しているものと考えられる。したがって、掘り下げる価値のある領域のように思われる。

多くの人にとって、ビットコインの最終目標は十分な支配力を持つことにある。それにより、信用拡大力が大幅に減少すれば、信用サイクル、ひいてはビジネスサイクルを中立化する可能性がある。これはきわめて野心的な目標であり、実現の可能性はきわめて小さい。ビットコインがこの規模まで拡大する稀な状況であっても、別の不測の経済的問題(特にビットコインにとって)が生じる可能性がある。

 

コインの両面:近未来の分岐型マネー

著者:アーサー・ヘイズ 原文はこちらです。

 

少しの譲歩で膨らむ政府の思惑

新しいマネーの最初のタイプと考えられるのが、中央集権型の電子マネーである。その起源は現行システムに直結し、デジタル時代における法定通貨(Fiat)のアップデート版といえる。それは既存の中央銀行制度と急速に大企業化している経済にとって自然(筆者の意見では必然でもある)な合成体である。 

電子マネーが可能になる背景として、消費者が社会的に私生活全体を企業に委ねることに慣れてきたという現象が大きく影響している。その引き換えに、消費者は娯楽や便利さを潤沢に手に入れている。ただし、現時点では、企業によるマネーの発行とそれに伴うプライバシーのさらなる低下を消費者が自主的(または強制的)に受け入れる動きはごく限定的に見られるのみである。

電子マネーの将来の方向性を最も明確に示していると考えられるWeChat Payは、中国内の現金を実質的に消滅させている。WeChat Payのシステムの仕組みを説明しよう。マーチャントはQRコードと携帯電話を使用して、消費者の銀行口座に直接接続しているWeChatウォレットから請求額を減額する。消費者がマーケットのレジに並んでいる間、人民元(CNY)が口座から即座に減額され、マーチャントの口座に加算される。マーチャントは代金を、消費者は商品を受け取り、現金を物理的にやりとりする手間は消滅している。

WeChat Payは、中国に頻繁に旅行する人々から大変好評を得ている。ただ、銀行業界でキャリアを築き、現在、ビットコインで生計を立てている筆者は、中央集権型決済システムのプライバシー面での制約もよく認識している。

世界各国の大手業者が現在運営している多様なモバイル決済システムは細部が異なる。購入した商品やサービスから購入した場所と日時まで、運営業者が消費者に関してほぼすべてを把握しているケースがある。こうしたデータは恐らく消費者に関して入手した他のすべてのデータとリンクさせることができる。

同時に、西欧諸国政府が、気の向くままに、消費者の個人情報を引き渡すよう企業に圧力をかけてきたケースもある。当然、企業はこうした要請に従う傾向にある。民間セクターの決済ネットワークやクラウドファンディングプラットフォームでも、問題のある考えや発言との関連性が深すぎるため、あるいはトラブルメーカーであるという理由で特定の人を排除するケースが発生している。これらすべてが必ずしも不当であるとは限らないが、不当であるかどうかを判断するのは、運営元自身である。

さらに、財政的な面からこの行く末を考えると、中央銀行や政府は、突然、または段階を追って企業の財政機能についてより実践的な方法で指示し始める可能性がある。例えば、商業銀行や大手ソーシャルメディア企業を代理人に任命し、決済ネットワークの中心点として、電子マネーシステムに参加し、処理手数料を稼ぐ権限を付与する方法が考えられる。

重要なのは、決済ネットワークのルールはコードを介して即時かつ完璧に強制可能である点だ。非効率で不正を犯しがちな人間がシステムに参加できる唯一の場所は、ネットワークの頂点である。ここでは、当局者がクレジットを直接利用者に発行し、各トランザクションを即座に課税し、ネットワーク加入者審査を行う。理論上、消費者の財政はこのように規律されることが可能である。

 

ここで、救世主ビットコインが登場

上述した金融システムはブロックチェーンに類似するネットワーク上で展開される場合もされない場合もあるが、誤解しないで欲しいのは、中央集権化(トップダウン)され、検閲の対象となる(中央集権化勢力と対立した場合、使用を禁止され得る)という点である。

対照的にビットコインはピアツーピアの分散型であり、耐検閲性がある。ビットコインは自主的な独立した私利に基づく参加者によるネットワークを通じて運営されている。参加者は何らの便宜も許可も要求せず、数ベーシスポイントのトランザクション手数料が他人から求め、受領を許可される唯一の対価である。ビットコインウォレットの公開アドレスとトランザクション履歴は全員に表示されるものの、個人の身元を特定する情報はトランザクションに一切含まれない。

つまり、ビットコインやその類似物は、社会が理想とする電子マネーのプライベート形態である。そしてプライバシーはうまく機能している社会の重要な構成要素である。道義的そして心理的理由から、市民は自分の生活に関する特定の情報を内密に保つ能力を重視する。

要約すれば、物理的現金は長期にわたりプライバシーに関して最適な貨幣形態となってきた。ところが、電子マネーは効率性と透明性に優れていることから、各国政府は次々と物理的現金を徐々に時代遅れにしていくものと見込まれる。消費者が考えるより早い時点で、プライバシーあるいは他の要因で現金は選択肢にならなくなるだろう。 一方で、ビットコインは、現金が駆逐された暁には、内密に価値を保持し移転できる特質から、民間市民からその内包する価値により高く評価されるようになると予想される。

 

全般的楽観論の根拠

ビットコインはまだ実験の初段階にあるが、運用開始から10年を経て、ビットコインのプロトコルはハッキングされていない。ソフトウェアの歴史上、実質的に最大の「バグ報奨金」を提示しているにもかかわらずだ。ビットコインは、まったく無関係の民間人が共通の目標に向かって協力するという素晴らしい成果物である。

参加者が代替的貨幣システムを共同でいかに構築してきたかを考えると、個々による分散的な共同の取り組みを通じて国際社会の他の側面において改善できることに対して大いに楽観している。

しかも、多様な中央集権的力が集結されている現在の状況下でそう断言するのである。 

人類の分岐型マネーの未来は、過去の独占的貨幣より明るいだろう。利便性の高いマネーもあれば、プライバシーが顕著に強化されているマネーもあるからである。

2018年12月27日の事後検証につきまして

12月27日 18:38 UTC(日本時間12月28日03:38)、BitMEXにおいて約1分間に渡り軽微な停止が発生し、この間取引エンジンが利用不能となりました。

この間、Websocket APIにてマーケットデータのアップデートがなされませんでした。

さらに、REST APIにおいて取引に関するデータのクエリ(read-only HTTP GETリクエスト、注文マネジメントリクエストではない)が18:13 UTCから18:36 UTC(日本時間28日 03:13から03:36)の23分間に渡り、通常よりも時間がかかる事象が発生いたしました。

これら両方の事象の根本原因は突き止められており、現在再発を防ぐための修正がなされております。進捗がありましたらお知らせいたします。

ご不便をおかけしまして申し訳ございません。もしご質問などございましたら、カスタマーサポートまでお寄せください。